「今話題の人物なだけあってか、首位独占してるねえ」

「まぁ妥当だがな」



泉と芥川が休憩から戻って来たのと入れ替わりに、次は私と景吾の番が回って来た。だから忍足のクラスが展示している校内ランキングを見に来たのだけれど、泉がMiuだという事が話題になったのはつい最近だからか、ほとんどのランキングに名前が入っている。可愛い人には勿論、良妻賢母になりそうな人にまでランクインしてるってどういう事なの。



「景吾の名前も鬱陶しいくらい入ってるけど」

「鬱陶しいってなんだ。そういうお前も、これ」

「イケメンな人って…喜んでいいのか複雑だわ」

「少なくとも団子5本目食ってる女にかけれる言葉じゃねえな」

「うるさいわ」



お腹減ったんだから仕方ないじゃん。



「最初の頃よりは減ったけど、未だにファンレターとか来るみたいだし、そのうち本気でアピールしに来る奴も出て来るかもね」

「…今までいなかったのが不思議なくらいだからな」

「で、いつ言うの?」



そこでなんとなく最近気になっていた事を問いかけてみると、景吾はしばし考えるように目を閉じた後、ゆっくり口を開いた。



「卒業までに伝えたい事がある、っつーのは言ってある」

「え、何それ初耳」



言い返せば研修旅行で2人になった時に言ったらしい。そうか私との賭けに勝ったから言えたのか、それを思うと悔しいような良かったような、とそれは今は置いといて、再び奴の話に耳を傾ける。



「緊張して言えないだとか、そういう奴の気持ちなんざ今まで微塵も分からなかったが、最近ようやくわかるようになってきた」

「跡部様が緊張とかウケるんですけど!」

「お前少しは雰囲気考えて物言え」

「冗談だって、続けて」

「…今はまだ、怖い」

「跡部様が怖いとか」

「口縫い付けるぞ」



これ以上言うと本当にやりかねないので、6本目の団子に口をつける事で黙ってみる。心狭いんだから。



「お前が揶揄したくなるのも分かる、自分でも自分が信じられねぇ」

「まぁ良いんじゃないの。私恋愛とは無縁だからよく分かんないけど」

「適当過ぎだろ」

「ここまで必死なの景吾見るの、テニス以外で初めてだし。無理に気張らなくて良いんじゃない」



そこまで言うと景吾は目を丸くして驚いたように私を凝視した。「お前その団子になんか変なもんでも入ってんじゃねえのか」って、失礼な。



「腐れ縁の仲という事でアドバイスしてみただけです」

「さっきのアドバイスなのか?」

「さぁ。でも、」



 応援はしてるよ、一応。

正直、景吾に言えるほど自分だって素直になれない部分があるのは自覚してる。でも、景吾だけじゃなく奴らを見てたらなんとなく応援だってしたくなるし、泉には勿論幸せになって貰いたいし、その部分には冗談でも嘘は吐けない。



「つーかクレープ奢って」

「お前財布くらい持てよ図々しい」



景吾が私の言葉に答える事は無かったけど、別にこいつになんか言われてもそれは私にとってさほど重要じゃないからどうでも良い。兎に角、こいつは自分と泉の事だけ考えて、泉を幸せにしてくれれば良いんです。仕方ないから見守ってあげようじゃないか、なーんて。
 3/5 

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