『いらっしゃいませー!』

「うんうん、いらっしゃったよー。えっとー、泉ちゃんはー」



泉ちゃんからのお誘いを受けて、張り切って氷帝の学祭に来た俺と亜久津。細かく言えば亜久津は張り切ってこそはいないものの、面倒くせぇとか言いつつちゃっかり来てるんだから会いたかったんだとは思う。本人の前で言ったら殴られるから言わないけどねぇ。

そんな訳で早速教室に入ると、そこは予想通り人で溢れ返っていた。ドア近くの場所に座らされて室内を見渡せば、すぐにお目当ての姿は目に入る。



「本当に綺麗だなぁ。もう隠す必要無いもんね」

「動きにくそうな衣装だな」



正体が学校にバレた事は、定期的にメールのやり取りをしているからもう知っている。照れ隠しで論点がズレてる亜久津は置いといて、久しぶりだからここぞとばかりに抱き着いてみようと立ち上がる。でもその瞬間、俺の頭にゴンッ!という鈍い音が落とされた。



「い、いったー!?何!?」

「いいから黙って座っとけよ」

「ちょっと跡部、俺客だよ!?」

「知るか」



ていうか立ち上がっただけで叩かれるってどれだけ理不尽なの。反抗したい気持ちは山々だったけど、泉が忙しそうなのは事実だから大人しく席で待ってる事にする。

とその時隣を見ると、なんだか見覚えのある顔ぶれが飛び込んで来た。



「ねぇねぇ亜久津、この人達四天宝寺じゃない?」

「あ?知らねぇよ」

「亜久津が知るはずないかー」



直接的な関わりは無かったからしばらく頬杖をついていると、白石君?が気付いて軽く頭を下げてくれた。よくテニスの会場でイケメン過ぎて眩しい!って誰かが言ってるのを聞いてたけど、本当にその通りで思わずまじまじと見ちゃう。いやいや俺そっちの気無いからね!



「自分ら確か山吹中よな?」

「あ、知ってるんだ。光栄ですー。俺千石で、こっちは亜久津」

「そうそう千石君と亜久津君。泉に招待されて来たん?」

「そうだよ」

「キヨと亜久津君!いつの間に!いらっしゃいませ!」



他の四天宝寺の人達とも挨拶を交わしていると、ホットケーキを片手にようやく泉が来てくれた。近くで見るドレス姿はマジで可愛くて、亜久津も満更でも無さそうな顔してる。むっつりなんだからー!



「来てくれてありがとうね。ちょっと今混んでるんだけど、また後で時間出来ると思うから」

「ううん大丈夫!それより泉ちゃんすっごく可愛いー!」



そう言えばこれまた可愛すぎる笑顔を向けてくれて、でもあまり時間は取らせられないから注文だけして一端話を区切る。後で写メとか撮りたいなー、って呟けば、欲望丸見えで気持ち悪いって亜久津に言われた。そこまで言わなくても!

でも、結局それからしばらく居座っても、泉ちゃんが忙しすぎてその願いは叶えられそうになかった。だから俺達と四天宝寺は一度教室を出て、また後で会う事を約束してから違う出店に回る事にした。



「後で会えるの楽しみにしてるね」



そんな事言われちゃちょっと落ち込んでた気持ちも舞い上がるよね!
 4/4 

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