「うっわぁー!ほんまでっかいで白石ー!」

「金ちゃん、あんま騒がんといて。周りの目痛いし、第一うるさいわ」

「噂には聞いとったけど、凄すぎるっちゅー話や」

「そうっすね」

「金ちゃん、迷子になったらいかんとよー」



泉からのお誘いで氷帝の学祭に来た俺らは、そのスケールのでかさに思わず校門前で立ち尽くしとった。なんなんこれほんまに校舎なん?金持ちこっわ。



「小春、ワイの傍離れたらあかんで!」

「今日は泉に会いに来たんやから邪魔せんといて!」

「ユウジはん、落ち込むでない」

「せや、諦め。ほな行くで」



グダグダ項垂れとるユウジはスルーして、とりあえず俺達は中に入る為に足を進める。時刻は10時半でまだ始まったばっかなはずなんやけどえらい混んでて、この人数で人に呑まれんように歩くのは中々骨が入った。



「白石ー、靴何処に置けばえぇ?」

「書いてあるやろ?よく読み。えーっと、ビニール袋を取って」

「あれ?もしかして」



そうして俺達が下駄箱にて靴を履き替えとると、後ろから聞き覚えのある声がした。振り向かんでもわかるその声に、思わず顔が緩みそうになるのを抑える。



「やっぱり四天宝寺の皆だ!いらっしゃい!」



んでもって振り向いたはええけど、固まる事数十秒後。全員の叫び声がその場に響き渡った。いやいやうるさいわ、でも、…なんでMiu?俺達の視線と叫びで泉もようやく状況を把握したんか、ごめんごめん、と軽い調子で説明を始めた。悠長か!



「四天宝寺の皆には説明してなかったね」

「だ、だだ大丈夫っすわ」

「光君、本当に大丈夫?」



キャラ崩壊しとる財前は最早手の施しようがあらへん。



「黙っててごめんね。蔵ノ介と千里には合宿の時にバレてたんだけど、中々言うタイミングが無くて。本当はずっと隠すつもりだったんだけど、この間学校でもバレちゃったから」



泉の説明に財前はキッ!と悔しそうな表情を向けて来よったけど、なんにせよこいつベタ惚れやから関係あらへんやん。謙也はどっちかっちゅーとそんなんよりもウエディングドレスに心臓をやられたんか、魚みたいに口をパクパクさせとる。ヘタレ。



「もーう、びっくりしたじゃない!でもそんな事アタシ達には関係ないわよ。今度ゆっくり話聞かせてちょうだい!」

「せやでー?何の事かようわからんけど、とりあえず泉ほんま綺麗やー!」

「金ちゃんはMiuの存在知らんとね」

「うん、良いのそれで。ありがとう小春、金ちゃん」



何はともあれ小春が上手く話をまとめてくれたおかげで、こいつらのうるささも静める事が出来た。それから泉を先頭に泉のクラスに向かい始めたんやけど、周囲はもう見てくるなんてもんやあらへん。晒し者やないでー。

んで、着いたら着いたでクラスは大繁盛しとって、最後の席に運良く座る事が出来た。



「あら芥川君かーわーいーいー!ロックオン!」

「ロックオンされちゃった!どうしよう!」

「随分団体で来たね。はいこれ、メニューどうぞ」

「兄ちゃん?か姉ちゃん?か分からへんけど、おおきになー!」

「いいえ。ちなみに姉ちゃんです」



四天宝寺では味わえん華やかな雰囲気に、こいつらはあちこち見渡して忙しなくしとる。田舎もんに思われるでやめや、とも言えず、黙って銀さんとメニューをシェアして見とると、そこにこれまたホスト顔負けな奴がやってきた。



「なんや跡部君、ついに転職したんか」

「うるせえよ。それより見惚れてんじゃねえぞ」

「…無理があるやろ」



実はまだまともに話せてへんなんて、言える訳あるかい。
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