「絶対成功させるぞー!」

『オーッ!』



3年A組。泉達のクラスは前夜祭終了後、明日からの学祭当日に向けて教室内で円陣を組んでいた。いよいよ明日は本番ということが嬉しい反面、これが高校最後の行事である事を考えたら寂しく思うのは誰もが一緒だろう。



「誰来てくれるかな」

「一般公開の時間が例年より長くなったからな。都合付く奴らも多いんじゃねぇのか?」

「そうだね、楽しみ」



学祭の日程は、1日目は一般公開、2日目は生徒公開、そして最後に後夜祭となっている。



「絶対あっと言う間だよね。準備期間もそうだったし」

「だろうな。良いもん作れたと思うぜ」

「私も思う」



跡部と泉が話す目線の先には、じゃれ合っている香月と芥川の他にも、笑顔が絶えないクラスメイトの姿がある。そんな和気藹々とした雰囲気の中、円陣のかけ声を行った実行委員が再び声を張り上げた。



「皆で写真撮ろー!」



その言葉に生徒達はまた元気よく返事をし、教室の一角に集まり始める。



「あとべと泉も早くー!」

「行こっか」

「だな」



2人は目の前の光景に再び微笑むと、駆け足で輪の中へ入っていった。



***



「よし、ばっちり!転ばないように気を付けてね」

「ありがとう、山口さん」



翌日、学祭当日。学校側で指定されている登校時間はいつもより遅めの9時だけど、最終確認を念入りにしたい私達は8時に教室に集合した。今はそれから30分経ったところで、衣装にも着替え終わり不安は無い。なので私と香月は、他の人を手伝うという理由で更衣室に残る山口さんに手を振り、その場を後にした。



「わー、皆色んな衣装着てるー」

「定番な着ぐるみが多いわね。芥川の羊は特注だから誰ともかぶってないけど」

「うん、良かった良かった」



贔屓だとは重々承知しているけど、ジローのあの犯罪レベルの可愛さに勝っている人は、今の時点では誰もいない。流石ジロー、なんて他の人から見たら失笑モノな親馬鹿思考を頭に巡らせる。



「つーかこの視線の数凄いな。流石Miu効果」

「ある意味、最初からバラしてればこんなに注目されずに済んだのかもねぇ。まぁいいんだけど」

「一般公開の方が心配じゃない?」

「あはは、大丈夫だよ。それより香月だってめちゃくちゃ格好良い」

「ありがとー」



自惚れてる訳ではなく、視線の事は考えてどうにかなるものではないので此処は思い切って割り切っておく。それより私は香月の格好良さにうっかりすると惚れそうで怖い!試着した時と違って髪型もしっかり整ってるし、宝塚風なだけあってメイクもキリッとしている。



「あんたも垢抜けたわ。うちのクラスの女子達が張り切っただけある」

「もう誰に何されてるかわかんなかったよ」



私はというと、さっき更衣室で着替え終わった時にクラスの子達が髪型からメイクまで全てやってくれたおかげで、自分で言うのもなんだけど中々化けていると思う。何か妙に張り切ってくれて嬉しかったなぁ。



「成功させようね!」

「勿論」



時刻は9時を回っている。学祭開始まで、あと1時間。
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