「(流石にやっぱり、恥ずかしかったかも)」



改めて自分の格好を見返してみる。動きやすいようにと丈が短めに作られたドレスは、俗に言うウエディングドレスそのものだった。ていうか喫茶店なのにこんな真っ白な衣装にしちゃって汚しちゃわないかも心配だし、学校で眼鏡を取るのにも慣れてないからなんだか全体的にそわそわする。



「泉!すんっげえ似合ってるよ!」



隅っこの方で大人しく立っていると、満面の笑みと共にジローが駆け寄って来てくれた。ちなみに香月はスーツを着た瞬間からクラスの女の子に囲まれてる。後ろから着いて来た景吾も黙って頭を撫でてくれて、更にはそれをキッカケにクラスメイトも褒め言葉を投げかけて来てくれて、嬉しさと照れが入り混じった感情になった。



「うわー本物のMiuやっぱ破壊力抜群だぜ」

「朝倉さん写メ撮ろ!」

「うん、ありがとう」

「つーか、スーツの跡部と並んでるとなんか新婚みたいだな!」

「馬鹿言ってんじゃねえぞ!」



思わぬ所で飛んで来た野次に、景吾が真っ先に反論する。そんなに嫌だったのかな、と何故かちょっとへこんだのも束の間、その顔が真っ赤なのを見て一気に楽しくなる。



「誓いのキスをどうぞ!」

「殺されてえのかてめぇ」

「まぁまぁ景吾」

「お前はなんでそんな冷静に…もう良い」



確かに皆のからかいの的になるのは恥ずかしかったけど、それも景吾の恥ずかしそうな姿を見てどうでもよくなった。今日はなんだか景吾の新しい一面を色々発見できて得した気分だ。それぞれ衣装に着替えたクラスメイトはいつもより確実に浮かれてて、私はその雰囲気に笑顔を止める事が出来なかった。



***



「せんぱあぁぁあぁい!何で俺にドレス姿見せてくれなかったんですかむしろ何で他の男に見せたんですかぁあああ!」

「うぜぇ」



19時。ようやく準備が一段落を終えて香月と廊下を歩いていたら、ちょうど帰りが重なった皆とばったり会った。鳳君は私の顔を見るなり飛びついてきてこの有様だ。日吉君が容赦なく頭を殴ったというのに、全く応えてないあたりがまたなんというか。ていうか誰だろう衣装の事言ったの…あ、ジローしかいないか。



「先輩、当日は2ショットで写真撮って下さいね!2ショットですよ?ここ重要ですよ!?」

「うん、いっぱい撮ろうね」



なだめるように言えば途端に目を輝かせ、尻尾を振って抱き着いてくる姿はもう大型犬と全く同じだ。宍戸君にブリーダー任せたら怒られるかなぁ。



「凄く似合ってたよ。見れたの一瞬だったけど」

「せやな、安西さんもイケメンやったし」

「それはどうも」

「ありがとう、2人共」



そう言ってくれたハギと侑士には素直にお礼を言う。女子更衣室から教室に移動するまでの間、2人は教室から私達の姿を見かけたらしいけど、なんせあの時はクラスの女の子達に囲まれてたからロクに会話が出来なかった。



「つーか腹減らねぇ?」

「それ思ってた!俺お好み焼きが食べたい気分!あとべー!」

「なんだそれ」



そんなこんなで話が進み、向日君とジローの提案で私達はお好み焼き屋に行く事になった。お好み焼きがなんなのかを知らない景吾に、侑士が「本場の味教えたるわ!」って張り切ってる。



「お好み焼きなんて久しぶりだなぁ。何食べよっか、香月」

「どうせ景吾の金だし好きなだけ食べちゃお」



食べる時にちゃんと食べて、学祭に向けて体力をつけておきましょうか。あ、宍戸君ソースこぼした。
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