「丸井先輩何食べますー?」

「そりゃメニュー全部だろぃ!」

「全く貴方という人は、食べ過ぎですよ」

「ただのデブン太なり」

「うっせー仁王死ね」



後輩指導の為に行った部活後、俺達は馴染のあるファミレスに立ち寄った。健康にうるさい真田がファミレスやファーストフードは1週間に1回までと決めているから、1週間ぶりに来る此処に赤也とブン太は浮かれている。て言っても、真田の目盗んで色んな所行ってるの知ってるけどね。



「お決まりになりましたらお呼び下さい」



店員がメニューを机の上に置いて去った後、まずブン太と赤也がメニューを独占して、それを真田が叱る。その間に仁王が横取りして次は柳生が怒る。いっつも同じ事ばっかりして飽きないねぇお前ら。

と思っている時に携帯が振動して、ポケットからそれを取り出す。そうして画面の着信相手を見た瞬間、情けないくらい心臓が跳ねるのを自覚した。でもそれをこいつらに悟られるほど落ちぶれちゃいないから、平然を装って電話に出る。



「もしもし精市、元気?」

「あぁ、元気だよ。泉はどう?」



ガタガタッ!と、危うく椅子から転げ落ちそうな音がする。分かりやすい反応の発信源はプリガムレッドだ。仁王なんて口ぽかんと開けてるし、お前そんなキャラだったっけ?



「相変わらず元気だよー。そっちの皆も元気そうだね」

「お察しの通り」



電話の相手が分かるなり騒ぎ始めた赤也とブン太の声が、どうやら泉にも聞こえたらしい。恥ずかしいったらありゃしない。でも泉はそれでも楽しそうに返事をしてくれたので、とりあえず用件は何なのかを問いかけてみる。

そうして切り出された話題は、氷帝の学祭に来れないか、というものだった。この時期に学祭なんて中々無い話だけど、泉のお誘いだし断るはずがない。



「皆も来れそう?」

「もう部活も無いしね。赤也は現役だから知らないけど」

「絶対行きます何が何でも行きます!!」



ちょっとからかってみれば赤也は泣きそうな顔で俺に縋り付いて来て、分かったから離れろ、と頭を抑え付ける。なんだかんだ赤也には甘くなっちゃうのも、いい加減直さなきゃなぁ。

それから電話はプリガムレッドに奪われ、その間に食事が来たので俺はそっちに手をつける。



「嬉しそうだな精市」

「うるさいよ」

「画面を見た瞬間の顔は撮っておいた方が良かったか」

「熱々ステーキ口に放り込んであげようか」



フォークに肉を刺しながら言ってみるけど、蓮二の口角は未だに上がったままだ。気に入らない。でももっとつっかかればそれこそ図に乗るのは目に見えてるから、俺は極力奴を視界から外しつつステーキに食らいついた。学祭まで後2週間、早く会いたいなぁ、なんてね。
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