「宍戸大丈夫?ボーッとしてるけど」

「分かってて言うんじゃねぇよ」

「白っていいよね。こう、清楚だけどなんか」

「うるせえ!」



待ちに待った翌日、天気は昨日よりも快晴で気温も高い為、既に水着姿の生徒達は誰もが早く海に飛び込みたがっている。しかしそんな中宍戸はある一点を見つめていて、それに気付いた滝は早速茶化すように彼の隣に立った。



「確かにあれは反則やなぁ。視線独り占めやで」

「あれで今まで隠し通せてたのが不思議だしね。宍戸、ガキ2人見習いなさいよ」

「もう俺の事はほっとけ」

「そう言う安西さんも充分綺麗やでぇ」

「へぇ、ありがと」

「ドライだね」



そこに忍足と香月も加わり、4人の視線は浮き輪を持って騒いでいる芥川、向日、泉の方へ向く。3人の傍には監視するように跡部が立っていて、その図に香月は笑いを堪えきれなかった。



「泉バナナボート乗ろ!」

「良いね!空きあるかな?」

「お前らあんま無茶すんじゃねぇぞ」

「かってー事言うなよ跡部、折角遊びに来てるんだしよ!ジローも朝倉も俺に続けー!」



人の気も知れずにバナナボードに乗り込んで行った彼らに、跡部は頭を抱えたくなるような気持ちに駆られる。



「岳人は完全に楽しんどるやけやろうけど、ジローは若干緊張しとるな」

「宍戸、お前も乗って来たら?」

「だからお前!!」

「こっちは気が気じゃねぇよ」



ポロリと漏れた本音は跡部が言うからこそ重みがある。それを他の者も理解しているのか、忍足は労うように彼の肩をポンポン、と叩いた。



「つーか私もバナナボート乗りたいんだけど」

「お前の操縦で乗ったら酔う気しかしねぇ」

「あ、じゃあ賭けしない?」



そこで跡部と香月は何やら話し始め、彼女が得意げに賭けの内容を伝えると、跡部はまんまと乗せられたように羽織っていたシャツを脱ぎ捨てた。



「上等だ」

「容赦しないから」



数分後、海上には一隻だけ物凄いスピードで走るバナナボートが見られたとか。

何はともあれ、研修旅行、まだまだこれから。
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