「しっかし食堂も半端ねぇくらい豪華だな。フルコースとかじゃなくて良かったけどよ」

「宍戸、テーブルマナーいつまで経っても覚えれへんもんなぁ」

「否定は出来ねぇ」



他の者よりも一足先に着いた食堂で、忍足と宍戸はそんな会話を交わす。

今日はホテルに着いた時間が既に夕刻を回っていた為、大ロビーにて軽い説明がなされた後はそのまま解散となった。本格的な沖縄散策は明日からとなるが、その前に夕食バイキングというイベントが彼らには待ち受けている。



「お、いたいた!侑士ー宍戸ー!」

「先に席取っててくれたんだね。ありがとう」



長いテーブルに2人が腰掛けていると、向日と滝を筆頭にちらちらとお馴染みのメンバーがやって来た。しかし、ジローに至っては我慢出来なかったのか既に皿に料理を乗せている状態で来たのだから、これには流石の彼らも苦笑する。



「ジロー…待ちきれなかったんだね」

「でもまだ食べてないよ!皆でいただきますするもんね!」

「そこまでてんこ盛りに持って来てればもう変わんないでしょうが」



とまぁこんな事もあったが、それから数分もしなうちに芥川はようやく念願の夕食にありつけた。最初は彼を呆れたように見ていた者も、料理の美味しさには伸びる手が全く止まらない。



「お前それでソーキソバ何杯目だ」

「3!美味しすぎるよ!」

「その体の何処に入んだよ」

「いくらでも!」



跡部と宍戸の間に立ちながら、ソーキソバを意気揚々とカップに盛る。その喜び方は芥川と通ずるものがあって、2人は目を合わせて笑った。



「泉だって俺の事言えないくらい食べてるじゃんー」

「この料理を目の前に食べるなって言う方が無理だよ。拷問でしかない」

「2人共食いしん坊やな」

「俺的には見てて気持ちいくらいの食べっぷりだけど、泉、明日のマリンスポーツ水着なのに大丈夫?」

「…今日ストレッチ頑張る」



滝に痛い所を突かれると心なしか食べる手が遅くなったが、それも一瞬の事。活気に満ちた夕食は、まだまだ終わりそうにない。



***



「食べすぎたー!」

「だから散々言ったじゃない」



夕食が終わり部屋に着くと、泉はお腹を抑えながら勢いよくベッドにダイブした。此処のホテルは人工の温泉もあるから後で行こうかなと思ってたけど、この様子じゃ今日は部屋のシャワーで終わりそうねぇ。そう考えつつ備えのテレビをONにする。



「香月見て、このお腹!」

「食べたらすぐ出るものね。翌日にはすっかりペッタンコになってるのがまた不思議だけど」

「消化が良いみたい」



グダグダと話しつつも、滝に宣言した通りストレッチはちゃんとやっていて、そういう所は女として見習うべきかもなと心の中で思う。まぁ思うだけで実践はしない、面倒臭いし。



「でも泉がマリンスポーツ選んだのは意外だったかも」

「んー…正直言うと、姿がバレてなかったら絶対に選んでなかった。でも1番アクティビティの中で楽しそうだし、それなら思いっきりはしゃいじゃおうかなって。開き直ってる訳じゃないよ」

「大丈夫、分かってるから」

「ありがとう」



明日のアクティビティは、マリンスポーツの他にも島散策、クジラウォッチングなどが用意されていて、その中から好きなのを1つ選べる形式となっている。やっぱり沖縄に来たからにはマリンスポーツが断トツの人気で、私達も特に迷う事無く即決した。ちなみに奴らも一緒だ。



「水中カメラも活用しなきゃ!」

「後日焼け止めね。あんた忘れやすいでしょ」

「そうだそうだ」



まさに心を踊らせているという言葉がぴったりな泉は、それからもしばらく何を持って行くかで悩み、ようやくシャワーを浴びたかと思えばすぐに爆睡した。クルクルと変わる表情が面白くて、はだけている布団を直してあげてから私もベッドに潜り込む。たまには、ハメを外すのもアリって事で。
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