「喧嘩してたんか」

「誰に聞いた」

「宍戸。自分らの事不器用や言うて笑っとったで。宍戸に言われるなんてよっぽどやなぁ」

「うるせぇ」



6時間目、A組との合同体育でついさっき宍戸に聞いた事をそのまま跡部に投げかけてみると、予想通り不満顔と一緒にそんな答えが返って来た。ついでに喧嘩しとった理由も聞いてみればぽつぽつと面倒臭そうに話し始めて、その内容にまた笑う。中学生か自分ら。



「何はともあれ仲直りしたんなら良かったわ。研修旅行前に割れたらつまらへんし」

「そうかよ」

「にしてもほんまに泉の事大好きやな」

「だからうるせぇよ」



これ以上からかったらほんまにキレそうやから、そろそろこの辺にしとこか。でも跡部はそんな俺の考えも見透かしとるんか、「言いたい事があるなら言え」と眉間の皺をMAXに寄せながら凄んで来よった。実際言うたらキレる癖に理不尽やなぁ。



「んま、少なくとも俺はそんなヘマせんで」

「馬鹿にしてんのか」

「別に馬鹿にはしてへん。でも、歯止め効かなくなっとるんやなぁっちゅー客観的な感想?」

「…知ってんだよそんくらい」



おぉ素直に認めよった。



「そろそろ我慢の限界とちゃうん?」

「かもな」



今までとは違うその目は確かに泉だけを見とって、ついまじまじとその横顔を見る(いや変な意味ちゃうで)。俺も負けへんようにせなあかんな、とか表面上は強がってみるものの、こいつには勝てる気がせぇへんっちゅーのが悔しい事に本音やった。



***



「結局心配損だったねぇ」

「ごめんね迷惑かけて」

「別に。仲直りしないはずが無いのは分かり切ってたしね」



放課後。研修旅行に向けての買い物を済ませた後にカフェに入り、改めて今日の話題を出してみると泉は苦笑しながら紅茶に口をつけた。目元はまだ若干腫れていて、あの短時間でどれくらい泣いたのかと思うとこっちも思わず苦笑いになる。



「なんか変だよね。景吾が相手だと子供っぽくなる気がする、私」

「自覚あったの?」

「今日気付いた」



とそこで泉が言い出した言葉には、内心お、これはもしや?とドキドキしたような感覚が襲って来る。なんだかんだでまだ先だと思ってたけど、意外とその日も近いのかもしれない?



「景吾って父性あるのかなー」

「…かもねー」



いや、そんな事無かった。一瞬で打ち砕かれた予想に少し肩を落とせば、また「どうしたの?」と無垢な目が私を見据える。私はそれになんでもないと首を振ってから、同じくカモミールの匂いが漂う紅茶を口に含んだ。



「楽しみだね、研修旅行」



研修旅行でなんか進展出来るように、せいぜい頑張れ王様。
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