家に着き大体の家事を終わらせた所で自室に入り、そのままベッドにダイブすると思わず大きな溜息が出た。最近なんだか年をとった気がする…それとも体力低下?いやだなーまだまだ17なのに、ってももう少しで18か。あれ、やばい、なんか独り言まで多い。おばさん化現象ってやつ?うっわーきつい。

なんてしょうもない事を思っていた時、ふいに携帯が鳴った。誰だろう、と思いながら通話ボタンを押す。



「もしもし?」

「泉」

「あ、景吾」



相手は景吾だった。



「また確認しないで出たのか?」

「あは、ごめんごめん」



景吾曰く、ディスプレイで相手の名前を確認しないで電話に出るのは私の欠点らしい。なんでも変態が相手だったら困るからだとか。流石に気にしすぎだと思うけど、心配してくれてる事には変わりないから軽く受け流しておく。



「それで、どうしたの?」

「あぁ。萩之介のことだ」

「ハギ?」

「…あいつに、なんかされたか?」

「えっ?」



随分途切れ途切れに話すなぁと思っていたらそんな事を言われ、ちょっとビックリする。でも景吾が心配するってことは…やっぱりハギはそういう部類なんだろう。それを独り言のようにごちれば景吾は多分苦笑しながらあぁ、と返事をしてきて、嫌な予感は的中してしまった。出来ればあんまり当たってほしくなかったんだけどなぁ。



「まぁ異変はないよ、バレちゃったけど」

「…そうか。まぁあいつなら言わないだろ」

「その前に言ったとしても皆信じないでしょ、私がモデルだなんて」



かるーい感じで雑談を進めるものの、さっきからその口調はやけに重い。だから何かあったのかなと思い切ってどうしたの?と聞くと、景吾は一度溜息を吐いてから若干呆れたように言葉を続けた。



「それがお前の秘密か」

「…へ?」



…あれ、ちょっと待った。そこで何か重大なミスを犯した事に気付いた私は、脳内で会話を高速で巻き戻した。私景吾に何て言った?



「え、え」

「バーカ、言いやしねぇよ。大体、なんとなく気付いてしな」



うっわー、と思わず携帯を持っていない方の手で顔を覆う。そういえば前に教室で4人で話しててMAGICの話題になった時、景吾は私にチラリと視線を送ってきた事があった。そうか、あの時から既に勘付かれてたのか。わーわー、どうしようカマかけられた?いや私が勝手に口滑らせただけ?一瞬にしてちょっとしたパニックになる。



「最悪だ…」

「口を滑らすお前が悪い。俺は別に萩之介の事しか聞く気はなかった」



これは流石に不甲斐なさすぎる。まぁ景吾なら言わないだろうけど、そういう問題ではないのだ。



「一気に3人に知られちゃうなんて…」

「3人?」

「実は、日吉君に1番最初にバレたの」

「…何故だ」



もうこの際全部言っちゃって良いや、と思ってとりあえず日吉君の事から話すと、景吾は全部聞き終えてから今度こそ大きな溜息を吐いた。もう何も言い返せない。



「ほんっと隙だらけだな。で、後は俺と萩之介って事か」

「…うん」



でも、ハギに関しては私は特にヘマしてないもん。その事を話すと景吾はわかってる、と軽く笑いながら言ってきた。



「これ以上はバレないようにしろよ」

「うん。でもさ、香月には言った方がいいのかな?」

「まぁアイツなら言っても大丈夫だろ。他の奴らも口外はしねぇだろうが、うるさくなるからやめとけ」

「そうだね」



そうです、今更だけど平凡1番ですから。



「じゃあ後は用件ないよね?」

「あぁ、じゃあな」

「おやすみ」



そこで電話は終わり、私は再びバフッとベッドにダイブした。あんな簡単なカマに引っかかるなんて私も末期かなぁ。とはいえ過ぎた事を気にしても仕方ないし、明日から撮影結構入ってるから今日は早く寝よう。

あぁ、お願いどうか戻ってきて平凡様。そんな淡く儚い願いを思いながら、私は深い眠りについた。
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