「此処か」

「ちょっと景吾、あれって」

「おーい!跡部!」

「丸井?」



幸村から伝えられた場所は、ちょうど徘徊していた場所からそう遠くない場所にあった為ものの5分で俺と香月は辿り着いた。ヘリから降り周りを見渡せば遠目に丸井の姿が見えたんだが、何故か奴は窓によじのぼってる真っ最中だった。その姿に俺達は容赦なく眉を顰める。



「あんた何やってんの、そこまだ破片残ってるじゃない」

「だって入り口開いてねぇんだもんよ!中から超叫び声聞こえるし、いい加減赤也止めねえと犯人死ぬぜ」

「赤目になってんのか?」

「バッチリ、っいってえ!」



腹に破片が刺さり叫んだ丸井を、香月が無理矢理引き剥がし降ろす。概ね興奮状態にあった切原の事だから奴は痛みなんざ感じて無かったのだろう。そうして少しむくれつつも丸井は入口に向かって走りだしたので、俺達も同じように走る。入口に着くなり、まず俺はドアの鍵の仕組みを解くべくそれに手をかけた。

が、何だこれは。



「これ、鎖をめちゃくちゃに巻いてるだけだぞ。力ずくで開けようとしたら余計こじれるに決まってる」

「あんた頭使いなさいよ」

「うるせぇ!」

「お前らちょっと黙ってろ」



そう言えば2人は大人しく黙ったので、順序を踏みつつも手早く鎖を外していく。犯人達も焦っていたのか見かけ騙しにも程があるそれはすぐに外れた。最後に鎖を適当な場所に放り投げてから、この怒りを思い切りぶつけるようにドアを蹴り破る。



「何くたばってんだよテメェ、起きろよ!」

「…予想以上だわ」



血まみれの男2人に、怯えている西野、眠っている泉、そして、いつもとは別人の切原の姿があった。…あいつの方が危ねえじゃねえか。



***



無我夢中だった。

ガラスが体に刺さろうが、血が至る所から吹き出そうが、泉さんが無事なのかだけが気になって思わず窓から飛び込んだ。そうして中に入った瞬間見えたのが、男2人が泉さんに迫ってる場面で、もうそっからはよく覚えてねぇ。でもとりあえず今の状況は、



「派手にやったな、切原」



なんつーか、自分で言うのもなんだけど、地獄絵図だ。

跡部さんに丸井先輩、それに安西さんが来て俺の暴走は止められた。まだ若干血が上ってるけど一応冷静に周りを見渡すと、倒れている男共は揃いも揃って醜い顔をしていた。これは流石にひでえ。



「息は正常だから大丈夫、むしろこれくらいの仕打ちは妥当でしょ」



無様にも差し伸べて来た男達の手を容赦なく叩き落とす。それでもう力が尽きたのか、男達は顔を伏せてそのまま地面に突っ伏した。



「で、よくもこんな手の込んだ事してくれたね」



それから安西さんの矛先は、誰か知らねぇけどさっきから怯えまくってる女の方に向いた。ゆっくりとでも着実にそいつとの距離を縮めて行く安西さんは、傍から見ても相当こえぇ。



「そいつが主犯なんだろぃ?なら遠慮いらねぇよ」



眠ってる泉さんを抱き抱えながら丸井先輩はそう言った。確かに同意だ、跡部さんも何か言う訳じゃないけど否定もしてないから、多分同じ事思ってんだろう。

とその時、入口から騒がしい音が聞こえた。



「泉!!」



芥川さんを筆頭に全員が入ってきて、仁王先輩が一目散に泉先輩の元に走り寄る。服が破られていたから上には丸井先輩の制服がかけられていて、仁王先輩はそれに気付くと更に辛そうに顔を歪めた。先輩の初めて見るその顔に、なんか俺まで辛くなる。



「やっと会えて嬉しいよ、西野」



とりあえず泉先輩の安否を確認して息をついている皆とは別に、そんな氷の様な声が聞こえて来た。ギギギ、と効果音がつく勢いでそっちを向くと、なんかそこには見ちゃいけないようなものがあった。安西さん、怖すぎ。俺、チビリそう。
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