「侑士!もっと跳んでみそ!」 「俺がそんな跳んだらキモいやろ」 お次は男子バレー。 「随分余裕だね、ジロー?」 「そんなことないCー?」 Aコートでは向日君と侑士、Bコートではハギとジローがそれぞれ出場してる。 「おもしれぇ事になりそうだな。特にBコート」 「だねー」 「俺は不安だけどな」 さっきのサッカーはあれから景吾も日吉君も何回かゴールを決めて、結果は景吾達のチーム、もというちのクラスが勝利した。日吉君、すっごく悔しそうだったなぁ。ちなみにその日吉君はバスケの第7試合目に行ってるので此処には居ない。宍戸君もさっきの試合、第3試合は見事勝利して、今は空き時間で暇みたいだ。香月は第2体育館でやってるバドミントンに出場中で、他の皆もそれぞれ競技に出ててるから、今残ってるのは景吾、宍戸君、私の3人だけ。 「侑士ずりー!」 「勝負にはフェイントも必要やで、岳人」 向日君の技は誰にも真似できないくらい凄いのに、いつも一緒にいる侑士は彼の行動パターンを知り尽くしているからそれを物ともしていない。 「岳人は動きが凄くても単純だからな」 「忍足は頭脳戦で責めてる。勝つなら忍足のやり方のほうが優位だな」 「極端だねーあの2人」 気持ちいいくらい正反対の2人を見ているのは中々おかしくて、宍戸君と景吾も時々歯を見せて笑っている。そんな私達を見て向日君は「笑うな!」と指を差してきたので、私達は苦笑しつつ後の2人の様子を見る為に一度そこを離れた。 が。 「…朝倉は見ない方が良いぜ」 「正論だな」 ちょうど真横にあるBコートに移動していると、近付いていくうちに寒気がしてきた。そして一瞬どす黒いオーラが見えた所で、宍戸君に後ろから目隠しをされそのまま方向転換させられる。 「普段と違って随分怖いんだね」 「Aー?滝に言われたくないC」 「あはは、本当にジローったら口が減らないんだから」 「…これは鳥肌モノだね」 聞いているだけでもあの2人がどんな表情を浮かべているか簡単に想像出来て、景吾も「勝負事になったら1番厄介な奴らだからな」と呆れたように呟いた。「しかも笑顔は崩さねぇから余計タチが悪い」と宍戸君も続き、流石にそれにはフォローの入れようが無い。 「朝倉さん!もうすぐ試合だから練習しよー!」 「うん、そうだね」 とそこでタイミング良く半沢さんが走ってきて、私はバスケの会場に行く事になった。正直安心したのは秘密。時間があったら試合を見に来るという2人の言葉を聞いた後、特に急ぐ必要もないのにテンションが高まっているせいか、私と半沢さんは小走りで会場まで向かう。 「何かテンション上がるねー!」 「本当にね、ワクワクしてきちゃった」 「ていうか朝倉さん暑くないの?」 不意に半沢さんが言って来たその言葉で、改めて自分の長袖長ズボンという格好を見直す。これは外の競技を見に行く時に日焼けしては困るから、その為の配慮だ。少し暑いけどもういい加減慣れたので、不思議そうにしている半沢さんには笑顔を向ける。 「競技無かったしね、そんなに暑く無いよ。バスケの時は勿論脱ぐけど!」 「朝倉さんやる気満々!」 それからすぐに会場に着き、前の競技を終えた香月が試合開始ギリギリで入って来てから開始の笛が大きく鳴り響いた。成果を出せる程練習もしてないけど、やるからにはちゃんとやろうと思う。 |