「今日から体育祭までの1週間は種目別の練習とする。バスケとバレーは第一体育館、テニスは外のコート、卓球は第二体育館だ。種目が2つ以上の者は気分と混み具合で何を練習するか選べー」

「うっわー適当ー」

「そうだねぇ」



翌日、3時間目、体育。先生の適当すぎる指示に私と香月は思わず目を合わせて肩を竦めた。それでも残されている時間は少ないからか周りは俄然張り切っていて、それを見て香月も感化されたように腕を捲る。単純なんだからー。



「一部男子と被る種目もあるが、そこは合同練習でも構わない!勝てるように必死で練習しろよ」

「景吾達ドンマイ」

「お気の毒だね」



その時先生が発した言葉に、女の子達は皆黄色い声を上げて大喜びし始めた。状況に着いていけない私達は、また顔を見合わせて苦笑する。景吾やジロー、それに侑士達と一緒に練習出来るのが嬉しいんだろうなぁ。男子の種目はバスケ、バレー、サッカー、ソフトボールで、確か3人共ソフトボール以外全部出るって言ってたから、必然的にバスケが混む事は間違いなし。唯一の競技なのにまともに練習出来そうに無いのを悟るなり、ちょっとだけ肩が下がった。



「あいつらバスケ来たら厄介ね」

「うん、混んでるのはちょっと嫌だなぁ」

「泉ー!」



とそこで、噂をすれば。私の名前を叫びながら爆走しているジローを見て、周りの女の子からもキャア!と悲鳴にも似た叫び声を上がる。遠くでは呆れ顔を浮かべている景吾と侑士がいて、練習出来そうに無いのはお互い様か、と腹を括る事にした。



「泉、合同練習アリだって!俺もバスケ出るから一緒に練習しよー!」

「私より香月の方が練習相手になると思うよ」

「だって安西相手だったら倒されちゃ」

「よーしやるわよ芥川ー」

「やだー!」



ちょっと失礼な物言いだったせいで香月の闘魂に火が付いたのか、そのままジローは首根っこを掴まれズルズルと引き摺られていった。助けてと懇願する声が耳に入るものの、パタパタと片手を振ってやり過ごす。だって自分の身が可愛いんだもの、ごめんねジロー。



***



「あの様子じゃ泉には近付かない方が良いな」

「せやなー、混むん嫌みたいやし。行きたいけど我慢やな」



そう会話を交わし、俺と忍足は適当な場所に適当に背中を預け立ったまま周囲を見渡す。ジローと香月が練習を始めたから1人になった泉の所へ行こうと思ったが、俺達が行く事で変に騒々しくなるのも迷惑だろうから、今は仕方なくこいつと大人しくしている事にする。



「合同練習なんざ面倒くせぇ事しやがって」

「けーちゃんの美貌がある限り女子達の視線は免れへんからなぁ」

「うるせぇ黙れ」

「普段自分で自分の事ベタ褒めする癖に、なんでやねん」

「てめぇに言われるのが気に食わねぇ」

「ひっど」



そう言いつつも名前を呼んでくる女共にはしっかり愛想を振りまいている奴を見て、俺には到底真似出来ねぇなと皮肉交じりに溜息を吐く。



「安西やだーーー!!!」

「ちょこまかしてないで正々堂々来なさいよ!」

「安西さーん、あんまウチのジローいじめんといてー」

「やらせとけ、あれくらいドSにやらねぇとジローはなんもしねぇ」

「ま、一理あるな」



そこで叫び声の聞こえた方向に目を移すと、大方予想していた通り香月に容赦なく練習相手にさせられてるジローの姿があった。ジローは運動神経は俄然良い割にすぐに怠けるから、香月が動かしてやれば本領発揮できるだろう。本人がスパルタから逃げ出さなければの話だが。



「8回目やな」

「あ?何がだよ」

「自分が泉をチラ見した回数」



全く持って口の減らない野郎だ。そう思った俺は忍足の足を思いっ切り踏み、痛がっている奴を無視して他の場所に移った。その時またふと泉を視界に入れてしまった自分に気付き、大袈裟なくらい違う方向に目を向けた。
 2/3 

bkm main home
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -