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「どうしよっかなー」

「泉!私ハンバーグ食べたい!」

「あ、いいね!」



そして放課後。

皆は部活だから、私と香月は一足先に近所のスーパーに食材を調達しに来た。授業中から何にしようかなとずっと悩んでいたけど、結局香月の提案で今日のご飯はハンバーグに決定。色んな形にしておもてなししたいなぁ。普通も良いけど、今日は特別な日だからどうせなら凝っちゃおう、なんてまた色々創造が膨らむ。



「じゃあまずは挽き肉、ってあれ?」

「ん?」



そんな事を思いながらお肉コーナーでカートを引いていたら、前方に見覚えのある姿が目に入った。遠くから見ても目立つ2人だけど、一応確証を得る為にそことなく近付いてみる。



「あーやっぱり!ブン太、赤也君!」

「え!?泉?」

「泉さん!」



そうすると2人の顔がはっきり見え、そしてそれはやはりブン太と赤也君だった。偶然出会えた喜びを抱えながら、驚いている2人に向かって駆け出す。



「あの制服は立海ね。加えてガムとわかめ…丸井と切原か」

「香月、それって誰情報?」

「俺様」

「だよねー」



香月は、普段皆で一緒にいる分他校のテニス部の事もそれなりに知っている。まぁそのほとんどは景吾から聞いたみたいだけど。



「氷帝の安西さんじゃね?」

「うわーっ、綺麗っすね!」

「切原、何欲しい?」

「調子乗ったー」



そんな香月のノリに笑いつつ、とりあえず私は2人に何で此処にいるのかを聞いた。すると彼らも今日は皆で鍋パーティーをするとの事らしく、ちょうど良いタイミングで赤也君が他の皆を見つけて手を振り始めたから、私達もそっちに視線を移す。



「泉?奇遇じゃのう」

「お元気でしたか?」

「久しぶりだね、会えて嬉しいよー」



勢揃いしている立海の皆のオーラに少し圧倒されつつも、ちゃんと挨拶をする。個々でもそうだけど集団でいたら更に目立つなぁ、というのは言われ飽きてるだろうから思うだけにしておこう。



「氷帝でもパーティーをする確率89%」

「流石鋭いねー」

「ほんとすげぇ偶然だな」

「うむ」



ジャッカル君の言う通り、確かにこの偶然は凄い!しかもスーパーとか立海メンバーは来る事滅多になさそうだし、そのレア度は中々だ。



「それにしても泉。此処で会ったのも何かの縁だと思わない?」

「確かに思うねー!」

「うっわー絶対こうなると思った」



そんな風に感心していると、いつの間にか隣に来た精市が話しかけて来た。それに対し私がそう返事すると何故か香月は面倒臭そうに声を上げて、駄目だったかな?と首を傾げる。



「まぁまぁそんな渋い顔しないで、俺達と一緒に鍋パしましょうよ!」

「そういう事なら是非!と言いたい所なんだけど、今日は私の家で氷帝の皆と、久々に来てる従兄とご飯食べるんだよね」

「マジかよぃ」



笑顔で嬉しい誘いをして来てくれた赤也君に、私も同じように笑顔で了承したい所だけど、残念ながら立海側に混ざる訳にはいかない。となると、解決策は1つだ。



「だから、皆がウチに来るっていうのはどうかな」



そう、立海の皆をこっち側に誘っちゃえば良いんだ!我ながら名案だと思っているとどうやら皆も同じ気持ちだったようで、一気に笑顔になってくれた。こんな大人数で大丈夫かと心配している柳生君とジャッカル君には勿論大丈夫だと切り返し、堅物な真田君も納得してくれた所でようやく香月も仕方なしに笑顔を見せてくれた。



「氷帝と対面するのも合宿振りだな」

「久々に語り明かそうか」

「明日は土曜ッスし、部活も午後からだからちょうどいいッスね!」

「泊まる気かお前は!?」



嬉しそうに話す赤也君にジャッカル君がツッコむと、私達の間には穏やかな笑い声が響いた。何だかテンション上がって来たー!



「じゃあ決まりー!」

「結局…ま、いっか」



香月はやっぱり少し面倒臭そうだけど、なんだかんだ頭を撫でて来てくれたから多分大丈夫なはず。偶然が引き合わせた出来事に感謝だ。



「お言葉に甘えるぜよ」

「どーぞどーぞ!えっと、じゃあご飯どうしようか」

「そっちは何を作ろうとしてたんだい?」

「ハンバーグよ」

「ハンバーグと鍋、両方作っても良いんじゃないか?これだけの人数だ、調理に問題はない」

「柳君の言う通り、大食いな方がほとんどですし、食べ残しも心配もありませんからね」



そんな言葉が決定打となり、皆は鍋の材料を、私と香月はハンバーグのソースを調達すべく、それぞれ違うコーナーへと足を運んだ。



「家にこんなに人が集まるなんて初めて!」

「でしょうね。騒がしくなるわよー」

「だねー。でもすっごい楽しみ!」

「私はあんたが幸せなら良いわ」



香月のその言葉にちょっと胸がくすぐったくなって、親馬鹿だね、と照れ隠しの意味も込めて言ったら、軽く頭を叩かれた。なんだか幸せで心がポカポカです。
 4/5 

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