「それじゃあ今日も大好評連載のスナップ、行こっか!」



モードを切り替えて、カメラマンさんの場の盛り上げに便乗して私も「行きましょう!」と意気込んでみせる。

マネージャーの北野さんと共に、私は今まで通りスナップの宝庫である街へ繰り出した。今回のスナップのテーマはずばりイケメン特集というもので、制服、私服問わず色んなイケメンを撮って行こうという確実にターゲットを絞った内容だ。なんでも、いつだか撮った赤也君とブン太のスナップがえらく好評で、若い女の子達からの要望が多かったらしい。

そうして街を歩いていると、ゲームセンターの前にたまっている女子高生達から結構な声援を貰った。このコーナーを始めてから街に来る事が多くなったから知名度も上がったのか、心なしか周りの視線が痛い。変な所で委縮してしまう性格は本当にモデルに向いてないと自分でも思う。



「あ、北野さん!あの2人組どうでしょう?」

「行ってみましょうか」



というのは置いといて、そんな矢先前方に体格の良い2人組を発見した。珍しい白の学ランだから目立っているのもあると思うけど、2人共遠目で見る限りでも整った顔立ちをしていると思う。だから私は2人を見逃さないよう、小走りでそこに駆け寄った。これが、後に重要な出会いになるという事を知らずに。



***



「おい、こっちで合ってるんだろーな」

「そうじゃない?あ、ねぇねぇそこの可愛い君ー」

「ナンパすんなら帰れ面倒くせぇ」



珍しく真剣になったから着いて来たというのに、氷帝に向かっている今千石はいつも通りあらゆる女に声をかけている。いい加減その光景に痺れを切らした亜久津は彼の鳩尾あたりを殴ってから、更に前方から迫ってくる喧騒に全力で舌を打ち、それが何かと目を凝らした。



「なんか騒がしいね。しかも俺達の所来てない?」

「うるせぇ」



いいからさっさと氷帝に連れてけ、と目で訴える亜久津とは正反対に、千石は前方の何かに目を輝かせている。



「こんにちは!今お時間大丈夫ですか?」

「うわぁ、誰かと思ったらMiuだー!本物だー!俺感激ー!」



そしてその正体が分かると、まるで遠巻きにこの様子を見ている女子高生のように千石ははしゃぎ始めた。亜久津もMiuという名前には聞き覚えがあるので一応目を向けるが、あまりにも千石が騒がしすぎる為結局また舌打ちに変わる。

口が達者な千石はそのトーク力で泉とも難なく打ち解けており、その時間は亜久津にとって無駄でしかない。だから2人の会話を少しも聞かずにそっぽを向いていた彼の耳に、突如「だってさ亜久津!」と何の脈略も無い言葉が入って来た。



「あ?」

「だーかーらー!俺達、イケメン特集のスナップに載るんだってー!」

「知るかよ、てめぇ1人でやれ」

「そんな事言わずに、是非お願いします!」



グイグイと腕を引っ張られ、しかも泉もとなれば流石に邪険には振り払えないのか、結局亜久津は無理矢理カメラの前に立たされた。レンズを向けられても千石のように笑顔を浮かべたりはせず、むしろ全く違う方を見ながらシャッターの音だけを聞く。

訳も分からぬまま始められた撮影はやはり意味不明のまま終わり、2人(亜久津に至っては半強制だが)は最後に泉からポラ写真を受け取ってから彼女の背中を見送った。



「生のMiuちゃんマジ可愛かったー!明日学校で自慢しまくろっと!」

「おい、目的忘れてねぇだろーな」

「わかってるって!氷帝にレッツゴー!」



千石が妙なテンションでそう言ったと同時に、ふと何の気も無しに後ろを振り返る。亜久津にとっては本当に特に意味の無い行動だったのだが、視線の先に居た泉がしっかりと自分を見ていた事に若干驚き、彼は少し目を瞠った。しかしそれもすぐに逸らされ、ペコペコと頭を下げながら彼女は去って行く。

何だあれ。不審には思ったものの気に留める程の事でも無いので、亜久津はそのまままた前を向き、浮かれる千石をもう一度殴ってから歩き始めた。
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