「今日はお疲れさま」

「うん、香月こそ部活お疲れさま」



今日はどうしても一緒に帰りたかったから、香月の部活が終わるのを図書室で待っていた。やっとの思いで歩けている帰り道はもう夕陽が差し込んでいて、あらゆる家から美味しそうな料理の匂いが香ってくる。



「なんか、凄いやりきりましたって感じ」

「すっきりしたでしょ?」

「またこれから大変になりそうだけどね」

「大丈夫、ちゃんと着いてるから」



頼もしい香月の言葉にありがとうと返せば、頭の中で昼休みの光景がフラッシュバックする。1人で図書室に居た時も散々思い出したのに、それくらい私にとっては忘れられない出来事だったみたいだ。そんな私の考えを表情から読み取ったのか、香月は更に嬉しそうに私の顔を覗きこんで来た。



「まさかあんたとここまで仲良くなれるなんてねー」

「思ってもなかったって?」

「って言っても、最初声かけた時から何となく長い付き合いになりそうだなとは思ってたかな」

「あはは、現実になるね」



当然でしょ。自信満々に言ってくれた香月にまた嬉しくなりながら、私達はいつもよりゆっくりとした歩調で歩き続けた。

皆もそうだけど、香月がいなきゃきっとここまで楽しい学校生活は送れてなかった。なんていうか、香月は別格だ。譲れないものは何か、と聞かれたら私は迷わず香月の名前を出すだろう。というちょっと口に出すには恥ずかしい事は、今は言えないけどいつかちゃんと言おうと思ってる。



***



「だから言っただろ?俺の言葉に狂いはねぇんだよ」

「なんか景吾とかぶるからやめてー!」



そして場所は変わり、今泉は優の仕事場の近くにあるレストランに来ている。此処に来た理由は勿論、今日の事を彼に報告する為だ。



「それにしてもなんつーかなぁ、過保護は俺だけで充分だっつーの」

「自覚してるんだ」

「そこつっこむんじゃありません。ま、いいんじゃねーの?友情が深まったっつー事で」



さりげなく友情、というワードを強調してみた優だが、その事に泉は気付かず依然としてオムライスを頬張っている。この調子じゃまだまだ先だな、と顔も知らない彼らの苦労を見越した優は、パクパクとそれを食べ続ける彼女を頬杖をつきながら眺めた。

ま、頑張ってくれたまえ少年達。特にケイゴ君。そこまで思った所で自分が段々とおじさん思考になっている事に気付き、彼もまた手元のワインを景気良く飲み干した。
 6/6 

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