昼食が終わって、時刻は13時半。 ちなみに、あの後厨房に行くと、やっぱり少し手こずってたけど怪我もなく頑張ってる皆の姿があった。メニューは魚の煮付けにおかずを三品ほどといった感じで、このメニューは昨日から決めていた。なんせ夜はバーベキューだから、昼はヘルシーにいかなければ! 「泉さん機嫌良いですね!」 「何かあったんですか?」 「ん?のちにわかるよ」 それにしても楽しみだなぁ、と頬を緩めていると、そんな私を見て不思議に思った朋と桜乃が首を傾げて来た。 そこでタイミングの良い事に氷帝と立海、それぞれから景吾と精市による休憩開始の声が響いて、それを合図に私は立ち上がる。この休憩が終わったらいよいよレクの始まりだ。私はこの上なく上機嫌で、終いには鼻歌まで歌っている始末。 そのままのテンションでドリンク、タオルの配布に向かったから2人からは怪訝な顔をされたけど、きっと2人もこの後すぐに歓喜するんだなって思ったら余計嬉しくなる。 「なんだよ、超上機嫌だな」 「その先輩の笑顔可愛すぎです!大好きです!」 「うん、私も鳳君大好きだよー」 気持ちが高ぶってるせいか、今なら何されても怒らない自信がある。今鳳君にした返事も普段の私からすれば対外有り得ないもので、案の定事情を知らない皆はえ、と声を揃えて目を見開いた。そんな皆を見て噴き出しそうになるのを堪え、さっさと立海に行く。 「や、やっと俺の片想いが叶った…!」 「絶対違うC!」 「にしても泉、なんであない機嫌えぇんやろ」 と、その時。いよいよピンポンパンポーンというちょっと間抜けな音のアナウンスがかかった。それによって私の気分は更に高まって、立海に手早くドリンク類を配布し終えた後、真っ先に景吾に駆け寄る。景吾は呆れ顔だけど、何だかんだ優しく受け止めてくれた。 「これより、最終日サプライズイベントを行う」 榊先生のその言葉に、全コートからどよめきが聞こえて来る。 「イベントですか!?」 「目輝いてんぞー長太郎」 「ウス」 「全員、1F大広間に集まりなさい。繰り返す───…」 内容は聞いての通り言ってないから、皆はまだ不思議そうな顔をしてる。その顔がもう少しで変わるのかと思うと楽しみで堪らない。 ふとデコピンをされたので景吾を見ると、なんとバーカ、と言われた。そんな顔しておいてよく言うよ、と思ったのは、口に出せば更にやられるので言わないでおく。 *** 「なー白石ー!これから何やるんー?」 「秘密や」 「白石はもう知っとると?」 「んーどやろなぁ」 「確実に知っとるんやないっすか」 誰もがこれから起こる何かに胸を膨らませ、浮かれている。四天宝寺を筆頭に、それからも次々と大広間に入ってくる合宿メンバー。その表情はどれも同じでたくさんの期待に満ち溢れており、更に落ち着きもなく、普段は冷静な者でさえそれを隠せずにいた。 「全員集まったな」 「嬉しそうな顔しとるわい」 全員が集まったところを見兼ね、榊と竜崎は壇上に立つ。そしてマイクを持ち、喋り始めた。 「本日は合宿最終日。このメンバーで過ごせるのは今日が最後だ」 「そこで、じゃ」 「最終日イベントとして、今から海に行った後、夜はバーベキューと花火を開催する」 榊と竜崎の言葉により、案の定大広間はたくさんの歓声に包まれた。 「ひょーっ!めっちゃ楽しみだぜぃ!」 「でも水着無いぜ?」 「これから跡部家のプライベートビーチに行く。その近くに水着のレンタルショップがあるから、自由に選ぶといいだろう」 ジャッカルの問いかけにも的確に答える榊に、歓声は更に高まった。 「タダやでタダ!」 「オサムちゃん、恥ずかしいからやめてほしいっすわ」 「…無料で感無量」 「死ねダビデッ!」 そんな賑やかな雰囲気のまま、一同はレンタルショップに行く事になった。イベントの始まりとは何故こんなにも心が浮かれるのか、それを今の彼らにあえて聞くのは野暮も良い所だろう。 |