「各校の部長とマネージャー代表の朝倉は、至急ミーティングルームに集まるように。繰り返す―――…」



榊先生の声で放送がかかったのは、六角に2回目のドリンク、タオルを配布している時だった。



「…あ、そっか私マネ代表なんだね」

「最年長だからね」

「泉さん行きましょー!」



急な呼び出しになんだろうとは思いつつも、とりあえず此処は素直に向かうべきなんだろう。折角だからという事で私は剣ちゃんとそこを離れ、他愛もない話をしながら歩いているとミーティングルームにはすぐに辿り着いた。ノックを一度した後にゆっくりドアを開け、中を見渡す。



「全員揃ったな。悪いな、わざわざ練習中に」

「監督、用件をお願いします」



そこには既に全員揃っていて、隅の方には顧問の先生方も全員いた。景吾の促す言葉を聞いて、榊先生だけではなく先生方全員が目配せをする。



「最終日にやる交流会の事や」



渡辺先生が言った言葉に、私達は交流会?と声を合わせて首を傾げた。これが呼び出しの内容なのはわかったけど、交流会って一体なんなんだろう?



「あー…全校のぉ、交流を深める為ぇ…」

「言いたい事は大体わかりました」

「それで、詳しい内容は?」



オジイの言葉を先読みした手塚君と精市。名前の通りという事ですね。



「バーベキューと海水浴なんてどうだい?バナナボートも良いねぇ」

「バ、バナナボート?」



竜崎先生の提案に思わず目を丸くして聞き返す。確かに歩いてすぐの場所に跡部財閥のプライベートビーチがあるけど、流石にバナナボートまでは無いんじゃ?と思っていたら景吾からまぁありますけど、という声が聞こえて、次はそっちに驚いて目を向ける。跡部財閥恐るべし。



「楽しそうですー!」

「特に反対意見はありませんが、水着はどうすれば…?」



バーベキューも海水浴も好きだから、喜ぶ剣ちゃんには賛同したい所だけど、精市の言い分ももっともだ。水着持って来てる人なんていないし、どうするんだろう。



「敷地内にレンタルショップがある」



杞憂でしたね。



「特別にタダやて。お得やない?」

「オサムちゃん食いつかんといて、恥ずかしいわー」

「…俺は特に反対意見はありません」



準備についてはなんの心配もいらないという事がわかると、手塚君を筆頭に、他の皆も次々と同意の意を込めて頷いた。そして気が付くと皆の視線は何も喋っていない私に向けられ、急いで手を上げて賛成の意思表示をする。



「決定じゃな。その日は14時に練習を切り上げて、その後夕食まで自由行動とする。あと…」

「夜はぁ…花火ぃ…」

「花火!?」



バーベキューとかだけでも充分楽しみだっていうのに、それに花火までプラスされるなんて!そんな喜びが表に出過ぎて思わず食いついてしまったのを、景吾に軽く小突かれ笑われる。

花火は消える瞬間が切ないとかよく言われてるけど、それ以上に皆で騒げる時間が凄く楽しいだろうし、何より綺麗に違いない。わー、何かすっごい楽しみになってきた!



「花火の後は入浴してそのまま就寝だ。就寝時間については長い目で見るが、朝はいつも通りの起床時間なので他の部屋に迷惑はかけないように。ちなみに、その日限り大ホールを開放し、他校との雑談も許可する」

「うわー、すごいですね!楽しそうです!」



榊先生の言葉で目をキラキラと輝かせた剣ちゃんに、皆は優しく微笑む。やっぱ誰から見ても癒し系だよね。



「あ、それとこの事は周りには言わんでくれ」

「サプライズっちゅー設定やからな。頼むでー」



そして、竜崎先生と渡辺先生の言葉に返事をして、話は終わった。私達は再び練習に戻るためにミーティングルームから出る。

でもこの時点で時刻は16時45分を回っている。皆はぞろぞろと戻って行くけど、もう夕飯の準備をしても良い時間かなとも思うし、中々の迷い所だ。そう思って立ち止まっていたら勘付いたのか、景吾がどうした、と話しかけてきた。



「もう厨房行っちゃおうか迷ってるの」

「メニューは決めたのか?」

「うん、決めたよ」

「ならいいだろ」

「そっか。うん、そうだね」



景吾の言葉で迷いは消え、私はこのまま厨房に行く為に足先を変える。手塚君にこの事を朋と桜乃ちゃんに伝えてほしいと言ったら、すんなりOKしてくれた。よし、じゃあ今日も頑張って作りますか!
 4/8 

bkm main home
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -