「遅いッスよー!」 「ごめんなさい!」 やっぱり六角で長居しすぎたみたいで、私が辿り着いた時には青学の人達は既に水飲み場にたまろしていた。申し訳ない気持ちになりながら、素早くドリンク、タオルを手配していく。皆がもみくちゃにならないで順番に手を差し伸べてくれたおかげで、それらは素早く全員の手に行き渡った。 「キャッ!?」 「え、越前!何をやってるんだっ!」 「いいじゃないッスか暑そうだったし」 そうして私が一息吐いた時、なんと後ろからリョーマに水をかけられ、つい大声が出てしまった。やってくれるじゃないですか。 「リョーマ、こっち見てー」 大石君の叱咤する声と河村君の心配する声が聞こえるけど、特に心配はしなくても大丈夫。この暑さだから体が冷える事は無いし、そもそもこういうのはやり返してしまえばいいのだ。案の定私の攻撃にリョーマはにゃろう、と対抗心を露わする。 「楽しそうッスねー俺もいれて下さい!」 「沸いてんじゃねぇよ猿が」 「あぁ?マムシに言われたくねぇーな、言われたくねぇ…って冷てっ!何すんだよ!?」 大石君と一緒に手塚君が私達を止めようとするけど、桃君と海堂君の喧嘩にそれは飲み込まれてしまった。そうするともう歯止めは効かない。 「俺も俺もー!」 「くれぐれも風邪は引かないようにね」 年甲斐もなく水遊びを始めた私、リョーマ、海堂君、桃君、そして新しく加わった菊丸君を見て、周助は穏やかに笑う。 けれどその数秒後、あ、という全員分の声がその場に響いた。勢い余って桃君が放った水が手塚君にかかってしまったのだ。 「お前達!」 一瞬沈黙が流れたものの、手塚君の怒声で更に賑やかさは度を増した。そして、それを区切りに全員参加になった事は言うまでもない。 「とりゃっ!」 「つ、めた…っ!」 「バンダナビショビショだよー」 海堂君は人見知りなのか、私が攻撃を仕掛けても顔逸らして俯くだけだった。純粋で年下らしい反応に悪戯心が疼く。 「うげ!朝倉ちゃん冷たいにゃー!」 「油断しちゃ駄目だよー」 「俺に来る確率98%」 「じゃあ残りの2%を活用して手塚君に!」 「朝倉!」 菊丸君にかけて、次は乾君にかけようと思ったけど勘付かれたから手塚君にかけ。そうすると手塚君は珍しく焦った様子で私の名前を呼んだ。焦っている手塚君なんて滅多に見られないから見物だなぁー、と全く反省せずに私は笑う。 「…何をやってる」 「景吾!皆!」 「お前…激ダサ」 するとそこに、いつもの見慣れた顔ぶれがやってきた。あらゆる所を濡らして笑っている私を見て、景吾と宍戸君は物凄く呆れている。 「楽しそーっ俺もやる!」 「こんな楽しい事してんなら呼べよなー!」 「俺も泉先輩がしてるならします!」 でも、勿論遊びに率先して入ってくる面々もいる訳で。ジロー、向日君、鳳君が新たに加わると、その場は更に大騒動となった。 「皆やるねー。俺は観覧してるかな」 「ウス」 「ほな俺は行ってくるでー!」 「気持ち悪いです」 「ったく…仕方ねぇな、休憩の間だけだぞ」 景吾のお許しが出た所で皆は歓声をあげて、侑士も混ざり、早速水遊びの続きをし始めた。普段こんな事をする機会がないだけに、なんだか凄く楽しい。 それからは賑やか…というよりはまぁうるさかったけど、 「えいっ!」 「朝倉先輩!俺は観戦してるだけです!」 「問答無用や!」 皆が皆笑顔で、私も笑わずにはいられなかった。 「どいつも浮かれやがって」 「でもこのメンバーはこういうノリじゃないとつまらないよね」 「…まぁな」 見守ってる景吾とハギも何かを話していて、内容は聞こえなかったけどやっぱり楽しそうだった。 「随分活発なマネージャーなんだな、跡部」 「僕こんなに飽きない子初めてだよ」 「本当に世話が焼けるぜ」 結局、後々来た竜崎先生に怒られてその場はお開きになった。でも次は海でやる約束をしたから、その時はもっともっと楽しもうと思いました。 |