「それじゃあ行ってらっしゃい」 「はい、いっつもすみません」 「行ってきます!」 お風呂に行く2人を見送って、マネージャーが書く日誌を書き始める。ちなみに彼女達がお風呂に行ってる間、私は貴重品を管理するという理由で一緒に入らないようにしてる。本当は一緒に入りたいけどこればかりは仕方ない。 そうして1人になった所で思い出すのは、日中に起こったあの騒動だ。今日は本当に色々あった。まぁそれは個人の問題だから日誌には勿論書きません。 「今日はご苦労じゃったの」 「お疲れ」 「…普通ノックも無しに入ってくるかな?」 皆の練習風景などを思い出しながら、眼鏡を外してデスクでくつろいでいると、いつの間にか雅治と千里が後ろにいた。音も無く現れるとは流石に心臓に悪い。その意も込めて2人を睨むように見上げるものの、 「やっぱり美人さんやのー」 「それはどうも」 「つけてしまうと?」 「だって誰か入ってきたら危険だもん」 全く応えていないようだ。もういいや。 更には2人が来てからすぐに眼鏡をかければ何故か渋られ、でもその直後にドアを叩く音が聞こえたので私はほらね、と少しドヤ顔で呟いた。そしてドアに向かってどうぞと返事を、静かに開くドアを見つめる。 「日誌出しに来たんやけど…ってえらいメンバーやな」 「わざわざありがとう」 「お邪魔しとるばい」 「ピヨッ」 入って来たのは蔵ノ介だった。言い忘れてたけど、各校の部長は自分の学校についての様子を日誌に書いて、合宿中は毎日私に出す事になっている。勿論疲れてるだろうから行数は少なくて良いんだけど、皆びっちり書いてくれるあたり流石部長だなって思う。 「良かったら3人共何か飲んでく?」 「えぇの?」 「朋と桜乃ちゃんが帰ってくるまでなら」 お言葉に甘えて、と床に座って寛ぐ3人と入れ替わりに、立ち上がって飲み物を用意する。 「マネージャーは3人部屋だったかの?」 「そうだよー」 「いやに広いと思ったらそういう事たいね」 「うん、男子ばっかりの合宿で女子1人1部屋は無防備すぎるって、顧問の先生方が」 「なるほど。あ、エエ匂い」 「跡部家御用達の紅茶だよーどうぞ」 「ありがとさん」 それから私達3人は色々な話をした。謙也や真田君はヘタレだとか、光君は1つの事に夢中になると周りが見えなくなるとか。謙也は周りからイジられてる所を何回か見て笑った覚えがあるからわかるけど、真田君がヘタレだというのは意外すぎた。だってイジったら制裁くらっちゃいそうだもん(って言ったら皆に笑われた)。光君も意外だなー。時々フリーズしたりするからなんだろうとは思ってたけど、普段はクールだし…っていうか夢中になってる事ってなんだろう? 「それは秘密やで」 ですよね。 そんな感じで談笑もそろそろお開きの時間となり、皆は部屋に戻って行った。ほどなくしてから朋と桜乃も戻って来て、賑やかな時間はまだまだ続く。 「あの、泉さん!」 1つのベッドに3人で座って会話に花を咲かせている最中、朋は妙に興奮した様子で私の名前を呼んだ。何?と首を傾げる。 「私達お風呂の中でずっと話してたんですけど、泉さんなんでそんなスタイル良いんですか!?」 「寝る前にやってるストレッチのおかげですか?」 「あー、えっとね」 まさか体型を褒めてくれるなんて思ってなかったから、嬉しさは素直に顔に出た。口で説明するよりも見てもらう方が早いと思い、唐突にストレッチ教室が開かれる。 やっぱり、寝る前のストレッチは仕事柄絶対に欠かせない。特に合宿中はハードだから、筋肉をほぐしてあげないと翌日色々と面倒なのだ。 15分程で私流のストレッチが終わると、続いては更に女の子ならではの質問をされた。 「あの…なんでそんな細いのに出てるとこは出てるんですか!?」 「うーん、そうかな?」 「脚も細長いしくびれも凄いし…」 「はは、ありがとう」 褒められるのは嬉しいけど、褒め倒しされるのは中々照れる。 「でも、朋も胸ちゃんとあるじゃない。桜乃ちゃんもまだまだこれから」 「泉さんカップなんですか?」 「朋ちゃんっ!」 「わー単刀直入」 素直な子って怖い、桜乃ちゃんもびっくりしてるよ。私のサイズなんかでよければ教えるけど、と思い再び口を開く。 「D65だよ」 「えっ、細っ!?」 「そ、その身長とカップでアンダー65…ほ、ほぇえー」 「バストアップには豆乳と腕立てが1番だと思う」 そこまで驚かれることなのかな?人並み程度にはあると自負してるけど、元々胸を強調する服はあまり着ないし、そこまで意識したことは無かったや。 それからも美容法を色々聞かれて、私が知ってる限りの情報を提供すると2人は、明日からやる!と張り切っていた。可愛いなぁーもう! 「胸デカイ割に凄く細いんだね?まるでモデルみたいだ」 「知るか」 「(…これは完全に勘付かれたか?)」 「泉さんスタイル抜群ですねー!」 その時、日誌を届けにきたものの、女子特有の会話のせいで中々入れず、ドアの外で待ちぼうけをくらっていた幸村、手塚、跡部、葵がいた事など、彼女は知る由もなかった。 |