「泉先輩、これ食べますか?めちゃくちゃ美味しいんですよ!あ、食べさせてあげますよ遠慮しないで下さいね」

「はいは…あ、本当だ美味しい」

「ですよねぇー!」

「泉っトランプしよーぜ!大富豪!」

「がっくん俺もするー!」



青学も乗せたバスの中、和気藹々と泉を囲んでトランプを始める芥川、向日、鳳。そんな彼らを穏やかな目で見つめる者もいれば、呆れている者もいた。氷帝からすると既に日常茶飯事化しているその光景だが、見慣れていない青学は勿論驚いている。



「にゃー不二ー、なんでアイツらあの子にあんな夢中になってるのー?」

「んー?」



誰もが思い浮かぶ疑問を菊丸は不二に問いかけたが、彼はただ笑顔で何でだろうね、と軽くあしらう。



「そりゃあんだけ綺麗だったらね」

「お前目大丈夫か!?」

「失礼なこと言ってんじゃねぇよ」



そんな不二の代わりに答えたのは越前だ。いつも通りあっけからんと、さも当然かのようにそう言い放った彼に対し大声を上げたのは桃城で、それにまた海堂がつっかかり、お馴染の喧嘩が勃発する。他の者は既に無視である。



「彼女に関しては何のデータも無いからよく分からないが、見る限り何か秘密がありそうだな」

「あんまり無闇に探っちゃだめだぞ」

「それにしてもすごい人気だなぁ」



乾、大石、河村に他の者はうんうんと頷く。



「くだらないことを話すな。桃城、菓子がこぼれている」

「あっ、すんません」

「越前がそんなに言うなら、是非素顔を拝みたいところだね」



そうして次第に話題は逸れ全員がもう泉に視線を向けなくなった中、不二は小声で越前に話しかけ彼の肩に手を置いた。それに当の本人は我関せずといった感じで、未だ楽しく騒いでいる泉に視線を送っている。



「もっとちゃんと見なきゃわかんないっすけどね」



言葉ではそういうものの、その目は試合時の彼のように自信に満ち溢れていた。



***



「あーもう何やってんだよジロー!」

「あはは、ごめんだC」



何度か大富豪をやり、そろそろ飽きたので次はなんのゲームをしようかと話し合っていると、ジローが作っていたトランプタワーがブレーキの振動によってパラパラと崩れ落ちた。思ったよりも四方八方に飛び散ってしまったそれに皆は不満げな声を上げて、私も思わず苦笑しちゃったけどとりあえず拾うのを手伝う。

その時ふと前に目を向けると、私の視界にはこっちを見てやけに微笑んでいる不二君の姿が映った。無視するのもなんなので軽く会釈をすれば、おいでおいで、という口パクと共に手招きされる。どちらかというと第一印象はあまり良くなかったので出来ればそっとしてほしいものの、それでこの合宿を乗り切れるとは思わない。なんにせよ青学にはまだ自己紹介をして貰っていないので、その意も兼ねて私は躊躇していた足を進めた。



「楽しそうなところ悪いね。まだ僕達の自己紹介してなかったでしょう?」

「ただ遊んでただけだから大丈夫。うん、お願いします」



そう言えば不二君は周りにも声をかけてくれて、まず最初に大石君と河村君が名乗ってくれた。2人共見るからに優しそうで、氷帝では感じられない暖かさにちょっとホッとする。が、反面乾君には真逆のイメージを持った。データを取らせて貰うよ、って、面と向かって言って良いんですかそれ。



「1週間よろしくねーん」

「力仕事なら任せて下さいッス!」



見るからにムードメーカーそうな2人は、爽やかな笑顔で名前を言った後にそう付け足してくれた。しかし桃城君に対しては横から海堂君の野次が入って来て、そのまま2人は喧嘩を始める。止めなくていいのかなと一瞬悩んだけれど、周りがスルーしてるところからして日常茶飯事なんだと思いそのままにした。

そして残りの手塚君に不二君、危うく素顔を見られそうになった皆の中では小さめの男の子と最後に向き合う。



「俺は1年の越前リョーマっす」

「越前君1年生なの?凄いね、まだ入学して間もないのにレギュラーって」

「どもっす。堅苦しいんで名前で良いっすよ」

「同じく僕も。まさか覚えてないとは言わないよね?」

「覚えてます、フジシュウスケ君」



わざと滑舌を意識して棒読みで言えば、彼はよく出来ました、と言いながら更に笑みを深めた。笑顔でいるのが常態なんだろうけど、その裏に隠されている何かに気付けない程鈍感でも無い。ほら、証拠に手塚君だって眉間に皺寄ってるもの。



「ウチの学校からも5人マネージャーがいるが、その5人は既に顧問の車で合宿所に到着している。協力して頑張ってくれ」

「ありがとう、頼りにしてます。1週間よろしくね」



そして咳払いをしてから仕切り直した手塚君にお辞儀をし、最後に皆にも軽く頭を下げて私は青学の前から立ち去った。5人もマネージャーがいるなんて嬉しいなぁ、と心なしか浮き足経つ。



「まだまだ業務用、って感じだね」

「とりあえずもう1回眼鏡ちゃんと外した所が見たいっすね」

「…あまり迷惑をかけるなよ」

「ふっつーに良い子そうだにゃー」
 3/4 

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