「眼鏡とんねぇかなー」

「絶対邪魔だと思うんッスけどねー」



どんだけ真田副ブチョに怒られても、やっぱ気になるもんは気になる。って思ってたのは丸井先輩も一緒だったみたいで、俺達は先輩達の目を盗んで朝倉先輩がいる此処、部室裏に出向いた。



「あっ!髪かきあげたぞ!」

「だから何すか」



死角になる場所から先輩を観察してっけど、今の所特に何も変化無し。

確かに性格も良いし気配りも出来るし裏表無さそうだけど、なぁ。なんだかんだ人間第一印象は容姿でしょうよ。別にブスって訳じゃねぇけど、あの根暗そうな格好で何で別名ホスト部って呼ばれてる程の氷帝テニス部と仲が良いのか、そこが1番理解出来なかった。



「何をしているのですか?」

「どぉっ!?ちょっ、座ってろ!」

「絶対大声出さないでくださいッス!」

「はい?…朝倉さん?」



と此処で柳生先輩がいきなり登場。ビビッたー。とりあえず朝倉先輩は気付いてないっぽいけど、全力で先輩を座らせて静かにしてもらう。柳生先輩にこの行動の経緯を離すのは気が引けたけど、そこは丸井先輩が何の悪びれも無く、さも当然かのように話してくれたから俺の手間は省けた。さすが図太い!色んな意味で!



「覗き見など紳士のする行為ではありません!」

「あれ、っつーかひろし、朝倉の事ストライクなんじゃね?」

「あぁ、好きな女性のタイプは清らかな女性ですもんね」

「なっ…口を慎みたまえ!」



案の定柳生先輩は顔を真っ赤にして怒り出したけど、話を逸らしちまえばこっちのもんだ。



「んまひろしの趣味はしったこっちゃねぇけど、俺達は眼鏡を外した朝倉の姿が気になる訳、で」



そう思ったのは丸井先輩も一緒だったみたいで、また何とも無い表情で視線を朝倉先輩に戻した。でもその瞬間言葉が不自然に区切られて、どうしたんだろ?とハテナを浮かべつつ、俺もつられて目を向けてみる。



「…え?」



その時柄にもなく、―――時が止まるってこういう事を言うんだ。と馬鹿真面目に思った。俺キャラちげぇだろ!



***



見るからに高性能な洗濯機を延々と回しても、数十人分の洗濯物は中々減ってくれない。だから私は暑さをごまかす為というのも兼ねて、手洗いでも洗濯をし始めた。でもやっぱり駄目だ、もう限界。暑すぎる。

そうして周囲に誰もいない事を確認した後、邪魔臭い前髪をかきあげ、ついでにサイドに垂れている後れ毛も頭上に束ねて、最後に眉間に溜まっている蒸し暑さから開放される為に眼鏡を外す。



「涼しいー…」



手足に傷がつかないように覆っていた長ジャージも裾を捲くって、上は半袖になった。いつもなら絶対しないけど、今だけは特別に地べたにあぐらをかく。あー、解放感…日陰とかあればもっと良いんだけどなぁ。

私はそんな事を思いながら、しばらくその格好のまま寛いだ。だから、そんな風に気を緩めていたせいで、この現場を見られている事になんて気付くはずがなかった。



***



「忍足ぃいいぃ!」

「な、なんや?そないに焦って」



壁打ち中、急に全力疾走して来た丸井と切原に圧倒され、思わず引け腰になる。いきなり何やねん、というツッコミを口に出す間も無く、2人は俺が使っていたテニスボールをむんずと掴み、そのままズイッと顔を近付けてきた。だから何やねん。



「お前の言ってた意味わかったぜ」

「やばいです、あれはやばいです」

「…外してる姿見たん?」



話を聞く限りどうやら泉の事のようで、思っとったよりも早い展開に興味がそそられる。俺の問いかけに2人はコクコクと頷いた。



「後、お前みたいにフェチじゃねぇけど足の綺麗さもやばかった」

「思い出すだけでもうなんか…」

「ほな、眼鏡取った姿どうやった?」



一向に興奮が冷めん2人の言葉を遮って素直に思った事を口に出せば、2人はは?と素っ頓狂な声を上げた。アホ面やな、イケメンが台無しやでー。



「いや、どうやった?って…知ってるからあぁ言ったんじゃなかったのかよ?」

「ちゃうって。まぁ言うならば、跡部やあらへんけど俺のインサイトで思った直感や」



言い終えた直後にものごっつい大きい溜息を吐かれ、そこまで呆れんくてもえぇやんと苦笑する。



「まぁ結果的には俺らも良いもの見れたし、忍足さんの直感も見事的中だったから別にどーでも良いんッスけど。それよりも、あの顔どっかで見たことあるんッスよねー…」

「いやいや、あそこまで綺麗なヤツ早々いねぇって」

「そッスよねー…」

「えぇなぁ、俺も早く外させたろ」



早くその話題に仲間入りしたいわ、と思いながらしばらく3人で話を続けとると、遠くから集合の合図が聞こえた。だから俺達はそこで解散し、浮かれている2人の後姿を見てこらはよ見なあかんな、と改めて思った。
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