突然だけど、俺は氷帝の奴らの趣味が全く持って理解できねぇ。



「忍足さんも日吉も、何であんな地味な人に構うんッスか?」



流石に赤也の質問は単刀直入すぎるけど、内心は俺も全力で同意している。別に、地味なのが悪いって訳じゃない。でもこいつらの容姿からしてあいつはあまりにも釣り合わないし、内面が良いとしてもどういう経緯でそこまで知る仲になったのかが疑問だった。確かにマネージャーとしての仕事は出来るし、ドリンクも超美味い。でもそれだけじゃ説明がつかないだろぃ。



「泉ごっつ綺麗やん」

「何処がっすか?」

「黙れワカメ」



直球なのは一度までしか許されなかったのか、日吉は赤也を物凄い目で睨んだ。代わりに俺がメンゴ、と謝ってから、忍足に視線を戻す。正直ブスだろうが綺麗だろうが、派手だろうが地味だろうが、そんな事は結構どうでもいい。肝心なのは、なんで氷帝ともあろう奴らが揃いも揃って構ってるのが朝倉なのか、って所だった。



「じゃあ自分らに質問や」

「んぁ?」

「ごっつレアな動物がおったとする」

「はぁ…?」



すると忍足はいきなりそんな事を言い出した。勿論俺と赤也はその意味がわかんねぇから聞き返す。



「でもその動物は普段、本当の姿を隠してるんや」



動物、ねぇ。例えが斬新すぎるっつーかなんつーか。



「そんな動物がおったら、自分らはどうする?」



もっと話の続きがあるのかと思いきや、忍足はそこで質問を投げかけてきた。いや、そりゃ答えは決まってんだろぃ。



「本当の姿を見ようと頑張る」



何が言いたいんだ?と思いつつも一応素直に答える。マジで何が言いたいんだ?



「本当の姿は綺麗なんっすか?」

「あぁ、自分らが今まで見た何よりも綺麗や。初めて孔雀見た時みたいな感じやろか」

「孔雀やばいッスよね!なら何が何でも正体暴くッス」



なんかこうやって言われると俺と赤也ってほんと現金だな。孔雀ごときで騒いでる赤也よりは俺の方がまだマシだけど。というのはおいといて、それがなんだっつーんだよ、と聞き返そうとすると、その前に忍足がもっかい口を開いた。



「それと同じや」



は?と赤也と声が重なる。そんな俺達とは対照的に日吉は何故かハッとした顔になって、えぇー氷帝意味分かんねぇ。

だから俺達がブーイングを始めたものの、忍足は相変わらず表情を変えずに「それは自分で見つけな意味ないで」とだけ言うと、そのまま踵を返してコートに入っていっちまった。それに続いて日吉も走り去って行く。




「綺麗な姿を隠してる動物、って…」

「それって、朝倉先輩がめっちゃ綺麗って事すか?」



赤也の言葉に俺は思わず無言になる。だってそんなん見た事ねぇからわかんねぇし、デタラメとか勝手な推測言った所で何にもなんねぇだろ。

しばらく頭を捻ってみたものの、俺達の脳味噌じゃ答えはどう頑張っても出て来なくて、結局そのままコートに戻る為に歩き始める。謎は謎のままってか。うわむかつく。そう思って眉間に皺を寄せると赤也はつんつん、と俺の肩をつついてきて、隣を向けばその顔は何か悪戯でも考え付いた餓鬼みてぇだった。



「先輩、行っちゃいますか!」

「おう」



という感じで赤也につられ、俺達は顔を見合わせて笑った後、コートに向かっていた足先を部室に変更した。目的はそりゃあただ1つだ。物は試しっつーことで、いざ行ってみますか。
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