I hate honest!





人は平気で嘘をつく動物だ。
もちろん俺も。
無垢のようにふわりと微笑んでいる人の、裏腹に潜む嘘を知った時の心境は想像できるだろうか。信頼していた分、その大きさは計り知れない。
心の内を隠す為に造り出す微笑み、それこそ嘘つきたちの最も簡単で最も効果のある武器。
それを持つのが人。
世俗では当たり前になっている。

でも俺の周りの奴らは正直だった。

お前は兄のくせ何も出来ない

弟の方が可愛い

役立たず

人の心を削ぎ落としていくような罵声を平然という。まだほんの子供だった自分には、それは真っ直ぐ響いて、自分の心をずたずたにした。痛かった。怖かった。

だから俺は嘘つきよりも、正直者の方が嫌いだ。ようするに、トラウマ。上辺だけでもお世辞でも、なにか俺を気遣う言葉をくれる人が1人でもいたら、少しは変わっていたのかもしれないが。
嘘つきな奴らと付き合っていくのは容易いことである。彼らの本心を探らなければいい。そうやって生きていけば、人生に幕を閉じる時まで傷つくことなく幸せに人生を送れるはずなんだ。

正直者なんか大っ嫌いだ。
それなのに、俺の隣には正直者がいつもいる。

可愛え

好きや

愛しとる

年相応とは言いがたい顔に満面の笑みを広げて、俺にそんな言葉を言い並べてくる、"正直者"。
少し変わったイントネーションで、自分の気持ちを素直に口に出す"正直者"。
その正直者のアントーニョが、いつも傍にいるのだ。

到底嘘のつけそうにない人懐っこい性格に、異常に多いスキンシップ。本来正直者が嫌いな俺にとって最も苦手なタイプだ。

「好きやで」

愛の囁きも傷つく言葉の一種だと分かっていたから、騙されまいとそう言うアントーニョの肩を押し退け、自分から引き剥がす。
それなのに、後から「嘘でした」って言われる事がたまらなく怖い。だから、引き剥がしても、彼の肩から手が離せない。

「ロヴィーノ」

名前を呼ばれると、なんだか泣きそうになる。俺はこんな、こんなタイプの奴は苦手なのに。

正直者なんて

大っ嫌い




だった









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