heartry year





直射日光がカーテンの隙間から差してきて、目蓋の裏にもその光が届いて意識が浮上した。

起きて最初に思ったのは、…暖かい、かな。

首裏に微かに吹きつく小さな寝息に頭を回転させると、よく見慣れた癖毛が視界に入った。
寝癖だろうか、いつもよりうねっているように見える。
新年を迎えて最初の朝は、今年もこいつと一緒に迎える事ができたのが、少し幸せに思えた。


クリスマスに続き正月は、毎年アントーニョと一緒に過ごしている。俺たちが恋人という仲になってからは必ず、もはや暗黙の了解にもなっているほどだ。
けれども今年のクリスマスはアントーニョが急に仕事が入った為一緒には過ごせなかった。フェリシアーノはジャガイモ野郎の所に行ってしまったし、俺は1人でいつになく不味いクリスマスディナーを済ました。

だからせめて正月は一緒に、と今に至るわけだ。これは後から知ったことだが、彼は寝る時間も惜しんで大量の仕事を終わらせて俺に会いに来てくれたらしい。
昨日の大晦日に鳴ったインターホンに出れば、涙声で「会いたかったで!」と言って俺を強く強く抱き締めたのは、きっとその為なのだろう。
心密かに嬉しく思った。

新年を迎えるまでのカウントダウンは、キスをしていた。
彼がキスで年越しをしたいだなんてとんでもない事を言い出したからだ。最初は恥ずかしくて嫌だったけど、アントーニョの作り出すムードに飲み込まれて、案外いいものだった。普段鈍感でへらへらしてるくせに、こういう時には本気だすのをどうにかしてくれ。

年を越した後は、2人でちょっと高めのワインを味わい、去年の出来事の話に花を咲かせた。
起きたら買い物に一緒に行こうという約束もして。

夜寝る時には、ひとつのベッドに大の大人2人で眠る。その窮屈ささえ嬉しかった。至福の時間とはこういう時の事を言うのだろうか。難しい事はよく分からないが、きっと正解だ。

あー…幸せ、だな……

朝になっても、昨日の夜腰に回された彼の手は離れてなどいなく、今も俺の身体を包んでいる。
素肌と素肌が触れ合っているため、背中が布団よりも幾分暖かい。

穏やかに眠りについている彼の寝顔をもう一度眺めていると、ついまた眠りに引きずり込まれそうになる。
また眠ろう。そうして、彼が優しく起こしてくれるのを待つんだ。

時間ならまだまだいっぱいある。
もう少しくらい、このままでもいいだろう。

さあ、今日はどこへ出かけようか。

















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