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廊下やエレベーター、部屋など、病院内の至るところに、たくさんのポスターが貼られた。

第○回ふれあいコンサート
1階ロビーにて開催

近くの高校・大学の音楽部や、クラブの人達が、年に2回程、病院で演奏をするらしい。患者やその家族たちのストレス解消のために定期的に行っている、いわゆるボランティアだ。

もともと音楽は好きだし、今回演奏を担当する大学が自分の母校だったのもあり、その院内コンサートに足を運んだ。
大人数が集まるには小さなロビーの席に座り、辺りを見渡すと、周りはお年寄りばかりだった。
偶然自分の部屋にはお年寄りがいないだけで、実は入院している人の半分以上はお年寄りだ。これはあくまで俺の推測だが、おそらく間違ってはいないだろう。それくらい、お年寄り率が高いのだ。

予定の時刻になると、指揮者の簡単な挨拶があり、すぐに演奏が始められた。
人数は少ないながらも、協調性溢れる美しい演奏だった。

けれど、自分はいつかこの美しい演奏を忘れてしまうのだろう。明日にはそうなっているかもしれないし、このコンサートがあったこと事態も忘れてしまうかもしれない。

めきめきと剥がれ落ちて行く記憶が苦痛となって、それに身悶える。皆が音楽に癒されている中、俺だけは随分と歪んだ表情だったはずだ。

たまらなくなって、曲の途中で席を立ち上がって病室に戻った。










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テーマ「人外ファンタジー」
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