別れない自信





「もうお前嫌だ!今すぐ帰れ!」

「嫌や!ロヴィーノが謝るまで俺絶対帰らん!」

「あぁそうかよ、じゃあ俺が出てってやるよ!!」

そう言葉を吐き捨て、ソファーに散乱していたマフラーを乱暴に掴み、ロヴィーノは玄関の扉をばたんと大きな音を響かせて出ていった。

「アントーニョ兄ちゃん、いいの?」

傍で立ち尽くしていたフェリシアーノが心配そうに眉を下げて尋ねてくる。アントーニョはフェリシアーノに慰めるように笑い掛けて言う。

「大丈夫やって」

そう言う彼の目線を辿ると、ロヴィーノが出ていった玄関の扉。ひとつ息を吐き、ただひたすらに見つめていた。



「さみいぞちくしょー…」

ついカッとなって勢い余って飛び出して来たものの、外は冬真っ盛りで、呼吸をすれば息は白い煙となって吐き出て、空は今にも白い冬の代名詞が降って来そうな色をしている。
特に行き場もなくただ夜の街を翻弄し、なんとなく止まった公園のブランコに腰を下ろした。ブランコは小さな子供を優先に使いやすいように低く作られてあり、ロヴィーノが座るには大分小さく思われた。

事の原因は、とてつもなく小さな事で、今思うとくだらなくて仕方がない。恋人である限り、もちろん今までも意見の食い違いは何度もあったが、幾度も互いに心を許して立て直してきた。けれども今回はそうする前に、自分は家を飛び出して逃げてしまったのだ。こんなことをするのは初めてで、この先どうすればいいのか分からない。かといって、あの場しのぎで取り繕って、きっと後悔するのは自分だと目に見えているのに、今更戻れない。
そしたら急にアントーニョの顔が見たくなってしまって、寂しさが体をえぐる。
心配しているだろうか、まだ怒っているだろうか。
静かな空気を切り裂くように、ブランコがキイと音をあげた。

「ロヴィーノ…」

突如温かい腕と熱い息に包み込まれ、体が強ばる。

「もう何処にも行かんといて…離れんといてや…」

額を背中に押し付け捻る。強い強い力で後ろから抱き込まれ、痛いのに何故か嬉しい。愛しているを痛みで感じとるってなんて幸せなことなんだろう。
来てくれた、嬉しい。
ごめんなさい、俺が悪かった。
言いたいことはたくさんあったのに、涙を押し殺したら言葉が喉から出ることを拒んでしまった。

「いっぱいキツい事言ってしもてすまへん…だから戻って来てや」

こくこくと頷くことしか出来なかったが、その術だけで精一杯気持ちを伝えた。


















涙がようやくおさまったころ、フェリシアーノがコートを持ってきてくれた。白い息を3つ浮かばせ、3人で道を歩く。

「あんな、これからもまた喧嘩とかするかもしれへんけど、逃げんといてな?」

「おう」

「親分、ロヴィーノがすぐ戻ってくるに決まってると思て大丈夫やと思ってたんやけど、俺が我慢でけへんかったわ」

「ホントだよー!俺も心配だからあんまり喧嘩しないでね?別れたりしたら俺、嫌だよぉ」

「それなら心配ないでフェリちゃん!」

アントーニョが鼻を赤くしてにかっと笑う。

「絶対別れないって自信があるさかい、本気で言い合えるんやから!」






「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -