4




今日もまた、いつものように起きて、身支度して、普段となにも変わらず仕事を始めた。
庭の掃除と花の水やりからロヴィーナの1日は始まり、次に王家の者の朝食のお手伝い。

それが、アントーニョ王子との唯一の接点。

昨日は奇跡的に朝食の時以外の接点が持てたけど、その夢は昨日でおしまい。
今日になった今、今までどおりアントーニョ王子と接しなければならない。
昨日の素敵な夢を引きずりながら。

そうよ、
もう夢は覚めたんだから。
しっかりしなきゃ

しっかり

しっかり、しなきゃいけないのに

大きなテーブルに座るアントーニョ王子が視界に入った途端、顔が熱くなって、つい俯いてしまう。昨日アントーニョ様が触れた部分の皮膚が熱をもって
じんじんと痛むほど熱くて
手が震えて
おぼんの上にのせているカップの中のカプチーノが、何十もの波紋を作った。

それでもこれは仕事なんだと、高鳴る心臓に落ち着くよう鞭を打って、一生懸命平常心を振る舞い、アントーニョ王子に朝食を差し出す。

その時ちら、と視界に入ったアントーニョ王子の顔は、いつもの太陽のような大きな笑顔はなくて

かわりに、春の日だまりのような、穏やかな微笑みが浮かんでいた。

「ありがとう」

いつものように、召使の私に礼を言う。
でもその口調はいつもより優しさで溢れていて、ふいに手に持っていたおぼんを落としそうになった。

私は慌てて会釈を返し、たまらなくなって足速にそこを立ち去った。
背中に視線を感じたような気がしたけど、振り向くような余裕もなかった。





あの笑顔を思い出す度に
心臓が跳ねる
アントーニョ王子の笑顔が視界いっぱいに広がって
息ができないほど
何かに胸が締め付けられる
私、どこかおかしいよ
病気かもしれない
図書室の本で、自分の症状に当てはまる病気を探したけど、見つからなかった
脳の病気?心の病気?
分からない
でもひとつだけ、自分の症状に当てはまるものを見つけた
だけど、それは病気じゃなかった
病気じゃないと知って、ひと安心する
それにしても
病気じゃないなら何なんだろう

この

"恋"って────










第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -