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夜遅くなって、布団に入る。

隣のフェリシアーノはすでに寝てしまっていて。

相変わらずさっきからちらちらと雪が降り続いていて、窓も寒そうに白く曇っていた。

ふと、フェリシアーノの話を思い出す。

『大切な人』

その言葉を聞いて一番に浮かんできた顔はアントーニョだった。

もちろん数少ない家族のフェリシアーノやじいちゃん、自分と同じく子分のベルギーやオランダだって大切な人だ。

でもアントーニョは…なんというか特別で

誰よりも俺と長い時間を共に過ごし
誰よりも俺を大切に扱って
誰よりも俺を愛してくれた人だから

アントーニョは、俺の大切な人


なぁ
アントーニョ……

もし

もしもだ

神聖ローマと同じようになったら
一番に
俺のところに
来てくれるだろうか

俺は
お前の大切な人に
なれているのだろうか


そう考えながら、俺も眠りにつくことにした。














そしたら、物音がした。

その音に、眠りに沈んでいた意識が浮上する。
だが、目は開かない。

なんだよ、人が寝てんのに…

少し不快に思いながら耳を物音に傾けると
玄関のほうから足音、そして電気のスイッチを入れるパチンという音。
普通ならここは泥棒が入ったんじゃないかと飛び起きるところだが、俺の意識は半分眠りについたまま。

なぜか凄く安心、してるんだ。
なんか…この足音、アントーニョのにそっくりで…いや、そのままかもしれない。

足音はだんだん俺が寝ている部屋に近づいてきて、ドアが静かに開く音がした。

目こそ開けていない俺だが、分かる。
今俺の部屋に入ってきたのはアントーニョだっ…て。
あれ、
なんかどっかで聞いた話だな…?


そしたらその人物は、俺の頭を撫でたんだ。

優しく、ゆっくり

ふわふわ、ふわふわ

余りに心地よい撫でる手に、俺の眠気はさらに深くなり、やがて完全に意識が眠りに落ちていった。












なぁ、

ちょっと待て

これって…
フェリシアーノが言ってた「魂が会いに来る」ってやつに似てないか…?


じゃあアントーニョは…?

まさか……!?

嫌だ

嫌だ嫌だ

「アントーニョ!!!」


一気に意識が浮上して、ベッドから飛び起きる。
はおっていたタオルケットは俺の汗で気持ち悪いくらいにじっとり濡れていて、肩を激しく上下するほど荒く呼吸をしていた。


「アントーニョ…!」

会いたい
会わなきゃ
今すぐ…!


スリッパも履かず上着も着ず、アントーニョのもとへ行くため走りだした。
















「ロヴィーノ…?」



…………へ、

「ど、どないしたん?そない慌てて」

「だって……お前、……え…?

なんでうちにいんだよ…?」

「ロヴィに会いに来たに決まっとるやん」

「え、どうやって入ったんだよ」

「フェリちゃんが開けてくれはった」

「でもお前…なんで生きてんだよ」

「…へ?なんで俺が死ぬん?
…あ!ロヴィーノ寝ぼけてんやろー!もう昼やで?寝すぎやぁ」

ひる…?ねぼけ…?

てことは俺……なんかすっげー恥ずかしい勘違いしてないか?カンチガイ?


冷静になって考えてみた。要するにだ。
俺は昨日フェリシアーノと魂がなんちゃら…という話をして、午前中もずっと寝て、その間にアントーニョがうちに来て、俺を起こさずに頭を撫でていた、と。

つまり俺の早とちり。

「〜〜〜〜!!!」

恥っずかし!!
熱が一気に顔に集まった。


「ちょ、ロヴィ顔真っ赤やで?熱でもあるん?」

そう言ってアントーニョは俺の額と頬に手を添えてきた。
ついでにじりじりと顔が近づいてくる。

「よっ……寄るなこのやろー!」

「まだ寝ぼけとんの?そんな子にはおはようのおまじないやで!」

アントーニョがいうおまじないは、単なるおはようのキスだった。












こうなったのもフェリシアーノが昨日あんな話したからだ。
……あとでフェリシアーノ一発殴ってやる。








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