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「ここが、ロヴィーノ君の病室やで。」

昨晩訪れた病院で知り合った、特徴のある訛りを話す看護師に、俺は案内された。
必要最低限のものしか置かれていない、病院特有の新築のような薬の混ざったような匂いが微かに漂う、真っ白な部屋。

今日から俺は、この部屋で過ごす。







『にゅっ……入院!?』

俺の病気を治してやりたいと言った後、看護師のアントーニョは上に相談したらしく、戻ってきたと思ったら、いきなり入院と告げられた。

『入院いうてもそない大したことせえへんから安心し。ちょっとの間、ロヴィーノ君の病状調べるだけやから。』

んな大事にされてたまるか。

『別に入院なんかしなくても普通に来れるぞちくしょー』

『せやけど家遠いんやろ?結構頻繁に呼び出したりするかもしれへんから、入院したほうが楽やと思って…』

『どうする、兄ちゃん?』
フェリシアーノが俺の顔を覗き込みながら尋ねた。

『でも俺が入院したらフェリシアーノが…』

1人になっちまうだろ

そう言い掛けると、フェリシアーノはふわりと笑ってこう言った。

『俺なら大丈夫だよー!気にしないで、兄ちゃんが決めてよ!』

でも、その笑顔が偽物ってことはすぐ分かった。
何年お前の兄貴をやってきたと思ってんだこのやろー。

…お前、ひとりは寂しくて嫌いだろ…?



だが、記憶が薄れていくのを痛感するたび、弟は傷つくのは目に見えている。
だから、なるべく早く病気を治すためと思い、悩んだ末俺は入院を選んだ。
フェリシアーノに心配は掛けたくない。
さっさと治して、こんな殺風景な病室、すぐ出てってやる。



「今日からしばらくここで過ごしてもらうんやけど、何か用事あったらこのナースコールで呼んでや。すぐ飛んでくで!」


今どき珍しいくらいテンションが高い看護師・アントーニョとは反対に、俺はそれに軽く頷くだけして、荷物をピンと張られた白いベッドのシーツの上にどさりと乱暴気味に置いた。
荷物といっても、服や食事などの衛生面での最低限生活に必要なものは、すべて病院側が賄ってくれるそうだから、暇潰しのための漫画本や雑誌しか持参していないのだが。

自分の病室を改めてぐるりと見渡すと、病室には全部で12個のベッドがあったが、どれもシーツは皺ひとつなくピンとはっているので、今のところ患者はロヴィーノだけのようだ。

別にどこがどう痛い訳でもないのに入院とは不思議な感じがするものである。

じゃあ俺、まだ仕事あるさかい、とアントーニョが退室し、1人になったロヴィーノは、病室のベッドにどさりと倒れこんだ。

早く退院したいのと同時に、早く自分の病気の症状を知りたかった。
ロヴィーノはベッドのシーツをくしゃりと握り締めた。








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