4





狂おしく求めた新大陸に足をおろした海を渡って来た彼らの中には、久々の土の感触に涙を流す者もいた。
飢えと不潔に閉所、波の攻撃を乗り越えた彼らにとって、そこはまさしくオアシスのように輝かしく見えた。鳥のさえずりが、まるで歓迎してくれているかのように聞こえてくる。長い航海で一度は失いかけた生気。しかし今や、船乗り達は港を出発した時と同じくらいに希望に満ちていた。

「とにかく、無事着いて何よりだよ」
「ほんまにな」

フランシスがテントを建てながらそう言うと、アントーニョが相づちをうった。ギルベルトはさっきから腹が減ったとぶつぶつ文句を言いながら作業に没頭していた。

「ええとこやねぇ。空気が美味しくて」
「そうか?俺には不気味にしか見えない」
「えー?綺麗な森やと思うんやけどなぁ」

都会育ちのフランシスと田舎育ちのアントーニョとでは感覚が違うようで、自然に囲まれて育ったアントーニョはそういった自然が好きだった。早く森を探検したいとも思っている。

彼らがこの地に降り立った目的は、未開拓の地の捜索、開拓、先住民の改宗であった。その上、新大陸には金や財宝が山のように埋まっているという噂が港町で広まっていたため、それ目的でこの船に乗り込んだ者も少なくはないだろう。
けれどアントーニョはそんなものにはこれしきの興味も持たず、"新大陸"そのものに惹かれてやってきた唯一の人間であった。アントーニョは25歳でありながら未だ独身で、常に新しい物を求めて世界中を飛び回っていた。彼はそこに安心できる自分の場所が欲しかったのだが、何処へ赴いても見つからなかった。ここに、彼の求める場所があるのだろうか。無くたって構わない、まず足を踏み入れることから、と彼はこの船に乗った。
これから見る自分の知らない新しい世界に胸を踊らせながら、アントーニョはテントを組み立てた。




四角い雲は、大きなカヌーと異人を連れてやってきた。異人達は大きなカヌーから降りてきたかと思うと、手際よく布製の家を建てたので、遠くの茂みからこっそり覗き見ていたロヴィーノは興味津々に目を大きく開いて彼らを見つめていた。彼らは見たことの無い衣服を身にまとい、見たことのない物を持っていた。

あれは何だ?
何処から来たんだ?

疑問ばかりが頭を忙しく駈け巡り、ロヴィーノの心臓の律動を速まらせた。
時たま風の合間に切れ切れに聞こえて来た異人達の言葉は、今まで聞いたことも無いさえずりだった。ロヴィーノは、そのメロディーをもっと聞きたい、理解したいとさえ思い始めていた。

ふいに、1人の男が皆の目を盗むように作業から抜け出し、森の中へ逃げ込むのが、遠くから覗いていたロヴィーノにはよく見えた。

ロヴィーノは物音立てずにその場をすっと離れ、森へ掻き分けて入っていった男の後をついていった。







「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -