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「ねぇ、あれどういうこと?」

就寝時間を過ぎた台所で、フランシスが腕を組んでエリザベータに問うた。

夜中、エリザベータが見回りをしていたところ、台所に明かりが灯っているのが見えたので覗いてみると、フランシスがいた。料理をしていた訳でもなく、ただ、黙って立っていた様子に、エリザベータは異様な雰囲気を感じ取った。

フランシスが"あれ"と代名したものが指すのは、言われなくても分かっている。

「私も詳しくは知らないわ」
「でも少しは知ってるんだろ?教えてよ」
「……」

エリザベータはひとつ小さな息を吐いて、フランシスに告げた。

「ロヴィーナは、今日からアントーニョ様の私室で寝食をする事になった…私が知ってるのはこれだけ」
「……っはぁ?」

フランシスがすっとんきょうな声をあげる。余程驚いたのか、少々声が裏返っていた。エリザベータは予想通りの反応だと思った。

「何でそうなんの!?ロヴィーナはただの召使じゃん!何がどうなったら王子と2人きりで暮らす訳!?」
「大声出さないでよ…私だって分からないわよ。…でも……」
「何」
「最近ロヴィーナ、ちょっと変だったのよ。元気無かったり、買い物頼んでも一晩帰って来なかったり…」
「それが関係してるって?」
「分からないけど…」

エリザベータは頭を抱えた。

「城内のほとんどの召使は、既にこのことを知ってる。もちろん口止めはしたけど、もしこのことが陛下やお妃様に知られたら……考えたくもないわ」

事態は思ったより深刻らしい。
アントーニョは一国の王子。後にこの国を統治するに値する唯一の後継ぎ。
そんな彼が、1人の召使に依存したとなれば、国の秩序を乱してしまうことも考えられる。

「それなら大丈夫じゃないか?」
「…何を根拠に言ってんのよ。これはそんな軽い問題じゃないわ、分かってんの?」
「まぁ最後まで聞けってば。俺、この前陛下と偶然廊下で会って話したんだけどさ、アントーニョ王子には…」








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