その指によく似合う






昔は毎日あってもいいという程毎年楽しみにしていた誕生日も、年頃になるとどうでもよくなる時もある。
誕生日ぐらいで、そんなに大げさに祝われても困る。
そう言っているのに、毎年毎年律儀にプレゼントと用意してくるお前はなんなんだ。

初めて貰ったプレゼントは酷い物だった。まだお互い小学生低学年だった頃か。
「ロヴィーノおめでとう!これプレゼントやでー!」
なんて大きな笑顔を咲かせて手に何かを握って差し出すもんだから、何だろうってわくわくした。
でもそれが何なのか分かった時は殺意すら抱いたのをよく覚えてる。
石って。
誕生日プレゼントに石って。

ショックを通りすぎて呆れ果てたロヴィーノに、アントーニョはひたすら屈託のない笑顔で微笑み続ける。悪気はないんだとは分かっていたから、彼の笑顔にそんなことはどうでもよくなった。


中学生になっても、彼は毎年誕生日プレゼントをくれた。
ロヴィーノがアントーニョの誕生日に何かをあげることはなかったのに毎年くれるから、見返りなんて求めていなかったんだろう。
プレゼントも歳をとるにつれて、ちゃんと相手のことを考えた物へと変わっていって、中学1年のときには自宅でとれたというまるまるとしたトマトを籠いっぱいにくれた。
小学校の時と打って変わって、あれは貰って嬉しかったし、少し、感動した。

この頃、俺はアントーニョに恋心を抱き始めていて。
恥ずかしくて彼を避けていた時もあったけど、そんな時彼は家にやってきてでも俺にプレゼント届けていった。


同じ高校に進学してもそれはまだ続く。
良い香りのする大きな花束をばさりと手渡された時は、驚きのあまり硬直してしまった。開いた口が塞がらないという表現が適切だろうか。
赤、ピンク、黄色、白…
両手に収まりきれない程大きな色とりどりのそれは、きっと相当高かったんじゃないか、本当に貰っていいのか、こんな男で友達の俺なんかより、これを受け取るにふさわしい女はいるんじゃないかといろいろ不安になった。
でも彼は「ロヴィーノの為に買ってん」の一点張りで、結局花束を受け取ってしまった。
彼が帰った後、それを花瓶にいけてしばらく眺めた。

誕生日プレゼントの豪華さは年々上がってきていることに気付いていない訳じゃない。気付かないわけない。
まだ自分の気持ちを言ったことはないけど、このプレゼントの大きさは、彼の自分に対する好意の大きさととってもいいだろうか。
とってはいけないなら哀れな勘違い、とっていいなら脈あり。
艶やかでみずみずしい花弁が、恋心をより一層深く感じさせた。




そんな誕生日を何度も何度も繰り返して、今日20回目を迎える。

"今から向かう"という文字が浮かぶ携帯電話のメール画面をゆっくりぱちんと閉じると、インターホンがいつもより高らかに鳴る。

今年はどんなプレゼントかな













「ロヴィーノ、」

玄関先で、2人して真っ赤に頬を染める。
ドアを開くと立っていたアントーニョの手に握られたプレゼントは、今まで贈られてきた物の何よりも小さく。
そして何よりも意味の深い物。

ロヴィーノのよりひとまわり大きなアントーニョの手が左手を取り、その薬指にするりとはめられた細いリング。

「俺と結婚したってください」









Happy birthday,Romano!



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