11.5

アントーニョ視点





結局夜になっても、ロヴィーナには会うことはなかった。
あの子の性格なら、急用で来れなかったことを、例えこちらが気にしていなくても後から謝罪しに来そうなのに。

そうじゃないのは、俺は彼女の事を何一つ分かってなかった、ってこと。
毎日楽しく話していたからといって、彼女を知り尽くした訳でもなんでもない。それなのに、その気になってしまっていた。
あれが彼女の本当の性格かどうかも知らないくせに。
知ってるんだ、財産を狙って近づいてくる使用人だっているってことは。
でも彼女はどう考えてもその類とは思えない。
…一体ロヴィーナちゃんは今日どこでどうしてたんやろ。
気になってなかなか寝付けなかった。

そもそも、自分は1人のたかが使用人に執着しすぎではないかと、不思議に思われてきた。仮にも一国の王子が、城にたくさんいる使用人の1人とこんなに親睦を深める話など先例に聞いたことはない。
それでも彼女は身分の溝を感じさせない。
その温厚な雰囲気はいつしかアントーニョの心に変化を生み出させていた。

…好きなんや。ロヴィーナちゃんが。

自分の中に生まれたばかりの、"すき"という感情はくすぐったいのに、身分違いだから告げてはいけないと思うと酷く心が痛む。
幸せにはなれないと分かっていても、してしまう恋がある。

それを嘆いてベッドから出て、部屋の窓から月を見上げた。
真ん丸い月は遥か真上からその銀色の月光を振りまいて、まるで励まされたような心が安らぐ。

ふと下に目線をずらしてみる。
月光に照らされ浮かび上がったその姿に、アントーニョは部屋を飛び出した。








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