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あれからいじめは毎日続き、生傷も後をたたなくて、精神的にもかなり追い詰められていたけれど、午後3時、アントーニョ様に会うときだけはなるべく元気に接した。
彼に余計な心配も、迷惑もかけたくなかった。
逆に彼に会う時間は、誰も彼の私室に無断で入る事はできないので、唯一彼女達の目から離れられる時間でもあり、1日の中で一番安心できる。未だに何で彼女達がこんなことをするのかは分からないけれど、彼の笑顔は傷ついた精神を十分なくらい潤してくれた。



「ロヴィーナ、買い出しお願いできないかしら?」
「大丈夫よ。」
「ありがとう、これ買い物メモね」
「うん、行ってきます」

買い物メモをエリザベータから受け取ると、彼女は行こうとするロヴィーナを引き止めた。

「…ロヴィーナ」
「何?」
「…なんだか最近、疲れてない?大丈夫なの?」

元気に振る舞っていたのに悟られて驚いた。ロヴィーナの演技はそんなに上手ではなかったらしい。

「…大丈夫よ、エリザさんは心配性ね」

確かに侍女長の彼女に全てを打ち明ければ、こんな毎日にもピリオドを打てるかもしれない。それでも何故か隠し通したいという気持ちが勝ってしまい、本当の事などこの口からは言えなかった。

上着を羽織って、城の大きな門をくぐると、世界は冬の代名詞により真っ白な絨毯が敷き詰められていた。平らなそれに足跡をつけていくのは、なかなか情緒あるもので。ちらちらと花吹雪のように舞う雪の中、ロヴィーナは城から一番近い街へと降りていった。
時刻を告げる針は、午後2時を差そうとしていた。





「門番さん、門を閉めて下さい」

「まだ閉門の時刻ではないのですが…」
「王から令を受けて参りました。今すぐ閉めて下さいとの事です」
「王の命令なら…分かりました」

彼女達の巧みな嘘にまんまと踊らされた門番は、城の門を重い扉で固く閉じた。
ロヴィーナの出発直後の事だった。











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