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「…じょしょさん、それなんですか」
「え?ああ、バイオリンだよ」
「バイオリン…」
「うん、喫茶店でたまに弾いてるんだ。伯約も弾いてみるかい」
「!いいのですか?」
「ああ、膝においで」

じょしょさんのひざは、とてもおおきい。
すわると、わたしの前にバイオリンをもってきてくれて、あごにはさむようにしてささえてくれた。
糸がついたぼうをバイオリンの糸につけて、ゆっくりひく。

「…!音がなりました!」
「凄いじゃないか。もっと弾いてごらん」
「はいっ」

ぼうをひいたりおしたりするだけで音がなるなんて、すごい。
うれしくなってしばらくそうしていると、音がたかくなったり、ひくくなったり。
いろんな音がなるんだ。
でも、このうた、きいたことがある。

「…あ、」

ほうせいさんが、かみになにかかいてるときに、うたっていたうただ。

「いい曲だろう?」
「…ほうせいさんの、うたです」
「うん。歌詞もあるんだよ。俺は音痴だから歌えないけど」
「ほうせいさんは、うたをうたってるのに?」
「はは、いくら夫婦みたいな俺たちでも違う所はあるさ。…法正さん、普段はあんなだけど、本当にいい歌を作るんだよ」
「…わたしも、ほうせいさんのうた、すきです」
「そうか。ありがとう」

じょしょさんに頭をなでられると、すごくうれしい。
なでたあとにわたしからバイオリンのぼうを受けとると、こんどはじょしょさんがあごにバイオリンをはさんでひきはじめた。
わたしがひいていたときより、とてもきれいなおと。

「そうそう、どうやらこの曲は、君たちに贈る曲らしい」
「え、」

じょしょさんがバイオリンをひくすがたは、すごくかっこいい。
なんとなく、ほうせいさんに見せたいとおもった。

「曲のタイトルは、愛しきみたちへ、っていうんだって」



「…徐庶め………なにをべらべらと…」
「かーさん、かおやくざみたい」
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