※運動しようか?後日談 あの事件があってしばらく経つ。 未だに彼女は俺と口を聞いてくれない。 あのあとペンギンにフルボッコにされ(さらにダウンした俺を踏みつけながら蔑んだ目で見ていた)しばらく大人しくしてますと誓わされた。 「(ていうか顔も合わせようとしないし…)」 俺が話しかけようとすると、あからさまに逃げる。 いつも一緒だったメシも、今は1人で黙々と食べているわけで。 なんか、なんていうか… 「さみしー……」 と、思わず漏れた本音はちょーーー面倒なやつに聞かれたらしい。 「えー?なになにシャチってば御傷心?」 ニヤニヤしながら近づいてきたのは 「………バンダナ」 「なにー、まだこの前の気にしてんのー?ねえ笑っていい?ぷぷっ」 「お前ほんとぶっ飛ばす」 「なんだよ、自業自得だろー?嫌がる女の子をムリヤリ…っていう。うわーシャチってば最低っ」 「……」 反論出来ないのが情けなくてちょっと涙ぐむ。だっておれ健全な年頃の男の子なわけだし! ていうか途中までいい雰囲気だったもん! 結構あいつも乗り気だったもん! 「…(やべー泣くなおれ!)」 「でもさあ、やっぱ襲うのはダメだってシャチ」 「……(全くその通りです)」 ああクソ、こいつに説教されるなんて…! 「もー早く仲直りしちゃえよ!うじうじとマイナスオーラ漂わせて空気悪いったら」 わかってんだよそんなことは…! 仲直りしたくて話しかけようとしても、逃げられるんだからどうしようもない。 すると、だからさ!と前置きして口を開いたバンダナ。なにか良いアドバイスが…!? 「とにかく押して押して押し倒せばいいの!自分に素直になれって!」 「お前さっきと言ってること180度違うじゃねーか!しかも全っ然解決法になってない!」 「そこは柔軟な考え方、もしくは臨機応変と捉えてほしい」 「えっなにこいつこそ最低だ」 「まずはそう、素直に!これ大事!しっかり謝ってこいよー。当たって砕けちゃってもおれが優しーく慰めてあ げ る」 「そんな気遣いいらねーよそんで語尾に星を付けるなうざい」 「でも、シャチだけじゃなくて最近元気ないよ?あのこ」 「……」 たしかにあいつが元気ないのは見ててわかる。もしかしておれと話したりしてないから?そんな期待していいの? 「行けシャチ!骨は拾うぜ!」 「うるせー!」 もうこいつのテンションに付き合うのは疲れた。残った飯をさっさと口に詰め込んで席を立つ。 でもこいつとの馬鹿らしい会話で勇気が出たのは事実で。 「(ちょっとだけ感謝してやるよ、バンダナ)」 というわけで只今このおれシャチは彼女の部屋の前にいます。 さっき部屋に戻ったのを確認したし、さあ後はドアをノックだ、と右手を上げてから恐らく10分は経っています。 おれってこんなにヘタレだったっけ。 「(…いいやおれはヘタレじゃねー!)」 自分を奮い起たせて右手に力を込める。 そしてドアをノックした、はずなのに、予想した音は出なかった。 代わりにがちゃ、という音。目の前から遠ざかるドア。あれ? 「……」 「……」 「…おっ、まっ待て閉めるな!」 「(じろ)」 「閉めないでくださいお願いします」 すると、なんですか、とぶっきらぼうに話しかけられる。あ、久々の会話。 「や、…まあ謝りたくて」 「…遅い」 「(そっちが避けてたんじゃんかー!)…ごめんなさい」 いつもならヘラって笑って、入りなよーって迎えてくれるのに。この扱いはまだかなり怒ってるってことらしい。 ああしかし。こいつの半径3メートル以内にいるの久々だし、声も暫く聞いてなかったし、なんかいい匂いするし。 「(って違うだろおれ!)」 「…」 「……えーと、入っても、いい?」 「…なに、シャチ。またえろいことすんでしょ、しね」 ぐさっ あ、今めっちゃ傷ついたおれ。言葉は時にナイフとなるんだよ使い方を誤るとおれの心をえぐります。 「………いや…ごめんなさい、おれが全面的に悪かった…反省、しました」 「……」 「今後、ああやって軽々しく、馬鹿な真似はしないと約束します」 「……」 なにも言わない彼女に、段々と絶望感が沸いてくる。 「…おれのこと、嫌いになった?」 これで肯定されたら、おれ海に飛び込むかもしれない。海の藻屑となろうそうしよう。すまんバンダナ、骨は残してやれないわ。 そんなことを考えていたら両頬に衝撃。ばちん!と良い音が鳴って、後から傷みがやってきた。 おれは顔面を挟み撃ちされたようだ。ふたつの手のひらがおれの顔を変形させている。 「シャチ」 「(びくっ)」 「わっ私だってシャチが好きなんだからね」 「(えっなにこれ)」 「あんなことあったし、避けてたけどっ…」 「…(えっえっ)」 「シャチと一緒じゃないの、…っ寂しかったんだからぁ……」 おれの前にいる女の子は顔が真っ赤で、口をへの字にさせていて、大きな両目には通常より水分が多くて溜まっていて、あ、こぼれた。 つまり神様、おれこんな可愛いこ襲わないような強い精神持ってません。 頬を挟んでいる手を掴み部屋に入り、そのまま肩に両手を置いてベッドにダイブ。 これじゃまさに押して押して押し倒せだよ! ああやっちゃった。さっきの宣言とか約束とかそっちのけじゃん。 今度こそ嫌われる? 「…」 しかし、彼女からは何の反撃もない。リアクションもない。 「……」 「……」 「……え?いいの?」 「………ばか、わかれ」 おれの首には細い腕が絡んできた。 あーもー可愛い!おれ幸せ! もうだめだ、めまいしてきた! --- リクエストと大分変わってしまいました土下座 希望に沿えず本当にすみません…でも書くのすんごく楽しかったです() そしてまさかのバンダナ登場という うちのサイトでの初出演はシャチの相談役でした笑 ナオミさんリクエストありがとうございました! |