どきどき。
柄にもなく緊張している。
どこの乙女だ、おれ。
バレンタインにずっと好きだった同僚の子からチョコを貰った。
それは所謂義理チョコだったんだけど、まあ、勿論おれは舞い上がってしまった。
そして今日のホワイトデー、男キャスケット、告白します!
と、意気込んだはずなのに気付けは夕方。
あれ、1日なにしてたのおれ?
意中の子はもう帰る準備をしている。
まって、まって、まって!
「ちょ、まって」
心の中で言ったつもりが口に出ていた。
しかも「まって」って…!
もっとマシな言い回しなかったのかよ!
とか思っている間に、ふたつの大きな目がこっちを見た。
「なあに?キャスケット」
いや肝心なのはここからだ!
昨日練習したセリフを思い出す。
「これ、ホワイトデーのお返しなんだけど…。バレンタインありがとな。チョコ嬉しかった(以下略)」
よし、完璧だ。
いざ!
「あのさ、これホワイトデーのお返し「あっ、ありがとうキャスケット!」…」
どうしよう遮られた。
この場合を想定してなかったやべェ!
「う、あのっ、えっと…」
「どうしたの?」
「おれっ、お前のこと好き!」
「…!」
「…!!!」
なにそれえぇえ言っちまったああああ!
昨日までのセリフ練習全部無駄!
ムードも何もない、勢いだけの告白だよこれ!
ああ、困ってる、どうしよう、どうしよう、どうしよう!
「キャス、ケット…」
「はい!」
冷や汗をかいていると、声をかけられた。
心臓が跳び跳ねる。
どうしよう本当に内臓が口から出そう。
ごめんって言われたらどうしよう。
お友達でいようって言われたらどうしよう。
あ、おれ死んじゃう。
「ありがとう」
「あ、うん」
「私も好き。キャスケット好き」
「あ、うん。…うん?」
え?
…え?幻聴?
「…ごめん、もっかい言って」
「私も好き。キャスケット好き」
一字一句違わず返された。
これ夢?
「これ、ありがとう。私すごく嬉しいよ」
僅かに頬を赤らめる彼女を見て、おれは目眩がした。
目眩がするのは幸せだから
---
ヘタレ代表キャスケットがすき