メイン | ナノ



シャンプーの買い置きと歯みがき粉が無くなりそうだなあ、と思い近所のドラッグストアにやってきました。
目当ての物はカゴに入れ終わったし、ぷらぷらと化粧水や栄養ドリンクを見て歩く。


「(あっリップ買おうかな)」


棚の前にしゃがみこんでリップを選んでいるとぴんぽんぴんぽん、と自動ドアの電子音が鳴る。お客さんが来たようだ。
何の気なしにそっちに目を向けるとお隣のポートガスさんだった。

相変わらずいけめんだなあ。店員の女の子「いらっしゃいませぇっ」ってなんか語尾がへにゃへにゃしてる。私の時は「らっしゃーせー」みたいな二日目のコーラみたいに気の抜けた挨拶だったのに。あ、でも二日目のコーラみたいにげろ甘な挨拶だったかも。なんつってはははーくだらねー。


特に面識があるわけでもないし、よくわからない気まずさから避けてしまう。
ポートガスさんが近づいて来た気がして、それとなく隣の棚に移動した。はずなのに正面にいるポートガスさん。なぜ。バッチリ目が合っちゃったよ。


「どうも…」

「…」

「……」


とりあえず挨拶してみたけど無反応。なんなんだ。
軽く頭を下げて横をすり抜けようとした、


「おい」


のになんなのこえー今の私に言ったんだよね私しかいないもんねこっち向いてるしねっていうか腕捕まれてるしね、


「あっはいなんでしょう」

「お前、あれか」

「はあ」

「隣のやつだろ」

「まあそうですが、なにか」

「…………」


なんだこの重い空気は…!店内に流れるしゃかしゃかした音楽がやけに耳に入ってくる。女の人の高い声が英語でなんか歌ってる。


「ちっ」

「(いきなり舌打ちだと)」

「なァお前、名前は」

「あ、xxxです」

「そっか」


なんですかご近所付き合いなのか、これ。今度からばったり会った時にはあらポートガスさんごきげんよう今日はいい天気ですねウフフ、なんていう仲になるの?面倒くさっ


「おれはエースだ」

「はあ」

「…で、いきなりこんなこと言うの変だけど」

「はあ」

「前から、気になってたってゆーか」

「はあ」


気になってた?なにが?ねぐせでもついてる?無意識に髪を撫で付ける。
あー早く帰りたいなー。テレビ今日なんかあったっけ。


「…あのさ」

「はい」

「付き合って」

「はあ、いいですけどどこに?」

「は?」

「え、」


テレビ番組を考えていてふらふらしていた視線をポートガスさんに合わせる。真っ赤だ。熱でもある?風邪薬ありますけど、あなたの隣に。


「ちっちがっ」

「?」

「だから、おれと付き合ってください恋人として!」

「ああ、そういう…」


って、ん。ん?
つきあう。付き合う?ポートガスさんと?こいびと?
……こいびと?


「いま返事しなくていいから、考えといてっ」

「はあ」

「じゃあっ」

「はあ」


よくわかんなくて、生返事をしてたらポートガスさんは行ってしまった。ぴんぽんぴんぽん、とまた響く電子音。

ぼーっとしてたら流れてる音楽はいつの間にか演歌になっていた。

じわじわと冷や汗が出る。さっきの流れを再確認してわかったこと。実に面倒くさい。
店員さんも話の端々が聞こえたのか、ちらちらとこっちを見ている。
明日からストレスデイズが始まりそうです、ちくしょう。


棚にきっちり並んでいた胃薬をひとつ手に取り、持っていたカゴに放り込んだ。


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -