「ロー」
名前を呼んだのに、何もなかったように無視された。
聞こえていないはずがない。
今この船長室には私とローだけで、静か。
彼女が来てるってのに本と見つめ合ってる私の彼氏。
本vs私、結果惨敗ってどうなの。
「ロー」
やっぱり返事は無い。
読書してる時は周りが見えないようだ。
本に負けるなんてくやしいぞー…。
「ロー」
「…」
「おーい」
「…」
「それ何の本?」
「…」
「また医学書?」
「…」
「てか医学書以外読むことってあるの?」
「…」
「私お腹すいたなー」
「…」
「…」
今までなんの反応も無かったのに、いきなりこっちを向くからびっくりしてしまった。
じろ、と私を見る隈の酷い目。
あ、お腹すいたに反応したのかな。
食堂にでも行って来いとか言われるのかな。
「…お前、さっきからうるせェな」
「は?」
「暇なら掃除でもしてろ」
「…(むかっ)」
なんだこいつなんだのこの俺様(いや知ってるけどさ)。
彼女が遊びに来てるのにこの態度ですかそうですか。
食堂行って来いのがまだましだよばかやろう。
これがペンギンならお茶のひとつでも出してくれるんだろうな。
「へっどうせ私は暇人ですよー」
「…」
また読書に戻ってしまった。
この自由人が!
「ばーかばーか、ローのばか」
「…」
「隈ひどいんだよ、睡眠時間増やせ」
「…」
どうやら我が船長は安い挑発には乗らないらしい。
と、思ったがページを捲る手が止まっている。
お?怒ったかな?
「さっきも言ったがうるせェ」
「ローが無視するからだよ」
「俺は今本を読んでいる」
「せっかく彼女が遊びにきてるのに」
「物事には優先順位があんだよ」
「私は本以下か」
「はっ」
今頃気づいたか、みたいな感じで笑われた。
失礼すぎると思わないか。
「あのさあ」
「…」
「トラファルガーって性格も悪けりゃ口も悪いよね」
「…ローと呼べ」
「デレた!貴重!」
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最後の会話がしたいがために書いた