「どーしよっかなー…」
考えた結果、とりあえず腰にバスタオルを巻き、身体にも一枚巻き、さらに肩に一枚羽織ってみた。完全防備!
はい、やっぱ全裸ですね。どうしよう。
廊下に出る扉をちょっとだけ開く。
「あのー…」
返事なし。
「…すいませーん…」
無反応。
「だ、誰か、いないですかー…」
左右をキョロキョロ見ても気配はない。誰か歩いてくるのを期待してしばらく待ってみたけど、通りかかる人はいなかった。
「…まあ」
とりあえず隠してるし大丈夫、と一歩踏み出し、来た道に向かって歩き出そうとする。けど、やっぱり羞恥心が捨てきれずにその場で止まってしまった。
がちゃり
どうしようかと足踏みをしていると、背後から音がした。ひいっ
「…おい」
で、声をかけられた。
振り返った先には、ドアから顔を出したペンギンさんがいらっしゃいました。
隠してるけどね!やっぱり気まずい!
「ぺ、んぎんさん」
「…妙な格好してるな」
それはある意味セクハラですよ?見てわかるように私を守るものはバスタオルのみですよ?
しかし今頼りになるのはこの人しかいない!
「あのですね…私、服なくて」
「ああ…」
「差し支えなければ、何か貸して頂ければ嬉しいのですが」
まず衣食住の衣の保障をお願いします。
そんな気持ちでペンギンさんを伺うと、ちょっと考える素振りを見せてから「少し待ってろ」と言われた。言葉通りその場で待機していると「シャワー室に入って、待ってろ」と言われた。
そうでしたここ廊下でした。
大人しく待っていると、しばらくして控え目なノックの音がした。返事をするとドアが少しだけ開き、紙袋を持った手が見えた。
「今用意できるのはこれしかない」
「いえいえ、何でも有難いです…!」
がさがさと受け取った袋の中身を確認する。…お?
「……わぁお」
「サイズは我慢してくれ」
入っていたのは、白い作業服。
これ、みなさんとお揃いじゃないか。
「…でもこれ、私が着てもいいのかな」
この服は、この船の乗組員が着るもので、つまりは仲間の証ではないのか。
私なんかが袖を通しても、いいのかな。
「………」
…とは言えバスタオルのままってわけにもいかないので有り難く使わせて頂こうと思う。
しかしですね、ペンギンさん。
「あのう、アンダーウェア的なものとかは」
「ない」
「…いや多分探せば、」
「ない」
「………」
素肌に作業服。
まじか。