「おお…」
水中から出てきたそれを観察すると、なんだか乗り物のようだ。でも今までの人生で水中から飛び出す船なんて見たことないぞ…。
様子を伺っていると、ドアっぽいとこが開いた。がちゃり
あ、人だ。へるぷみー!
「おーい」
「…?」
「こっちです海です」
私の声にどうやら気付いてくれたらしい。
「……」
「……」
「……こ、んにちは。いい天気ですね」
「…アンタなにしてんだ」
「…漂ってます、漂流者です、助けてください」
「本当にありがとうございます!助かりましたまじで」
白い人に助けてもらって、今は甲板の上にいる。上げてもらった時にほとんど下着姿だったけど、すぐさまバスタオルを頂いた。ありがたい。
「(赤いポンポン…かわいい)」
「アンタなんで海んなか漂ってた?」
「…え、なんででしょうね…ベランダから出たはずなんですが」
「は?」
「一歩踏み出したらばしゃーんって」
「……」
「そんな可哀想なものを見る目しないでくださいよ、事実です」
しかし面白い帽子だな。ローマ表記でペンギンって…好きなのかなペンギン。
船に上げてもらい数人をちらほら見かけたが、みんな同じ服を着ている。
あれ?なんだか見覚えがあるような。
ふむ、と考えているとなんだか周りがざわつきはじめた。なんだろう?
と、やけに足が長くスタイル抜群な人が来た。
他の人とは服が違うし、周りの反応からもなんだか格上っぽい。自然と背筋が伸びる。
「船長ー!ペンギンがなんか妙なの拾った!」
隣にいたサングラスのお兄さんが格上さんにそう告げる。やっぱ船長さんか。そしてあのポンポンさんはペンギンっていうんだ…。まんまだな。
「(ていうか妙なのって失礼な!)」
少しむっとしながら船長さんの方を伺うと、ぎろりと睨まれた。目の下を縁取る濃い隈がなんか怖い。
「(ひいっ)」
「…変なモン持ってくんな、もと居た場所に捨ててこい」
「え、私は犬か猫ですか…!」
私にも人権が!ていうかその場合、海に投げ入れられるんじゃないですか、海水にリターンですか?!
私の今後はどうなるんだ!と慌てていると、船長さんの後ろからのっそり歩いてきたオレンジに気がついた。
「あ」
「あ」
向こうもすぐに気付いてくれたみたい。
そういえば、他の船員さんの背中にも似たようなマークあったなあ。久しぶりに見たから、すぐ気付けなかったけど。
そっか、ここは君の船か。
「やっほー、久しぶりだねベポくん」
(君の姿を見て、どれだけ安心したことか)