ベポくんがいなくなってから、もう半年くらい経つのか。
ぼんやりカレンダーを見ながら考えた。
テレビのそばにぽつんとおいてある写真立ての中では、私と「ベポくん」が並んでいる。
あれを渡せるのはいつだろう。
そう思いながらいつものように掃除を済ませ、さあ洗濯干すか!と意気込んでいたのに。
ベランダに出る窓が開かない。
すっかり良くなっていた立て付けがまたおかしくなっていて、力を入れてもなかなか動かないのだ。
「なんだよぅ、しばらく調子良かったの、にっ」
がががっと音を立てて、やっと開いた窓。
さて!これで出れる!
そして一歩踏み出そうとした瞬間、不意に眠気に襲われた。
ぐらっと傾く身体。
「あ、れ?」
少しよろけながら一歩、足を前に出して体勢を建て直そうとした。
なぜか、足場がなかった。
「(えっ)」
そのまま倒れていくのに、そこにあるはずのコンクリートにぶつかることもない。
数秒、浮遊感に包まれたけど、私の頭は状況に追い付かない。
なんだこれ!と、やっと思った時には同時に、ばしゃーん!と盛大な音がした。
全身が冷たい。目がいたい。息が出来ない。
あと、しょっぱい。
「がほっ………は、あ?」
手足は勝手にじたばた動いて、やっと苦しさから解放された。
慌てて周りを見渡す。
そこは、どう見ても海でした。