ベポくんの睡眠量が異常だ。
改めて考えて、その結論に至った。
元々昼寝は好きなんだろうけど、思えば昨日から急にひどくなった。
朝寝坊して、二度寝して、ご飯を食べたら昼寝して、おやつを食べたらすぐに寝て、夜もさっさと夢の中という。きっと起きてる時間の方が短かったに違いない。
普段ならキッチンで料理をしていたら「ごはんなぁに?」とつまみ食いしに来ていたけど、今日はそれがなかった。
気になって様子を見に行くとやっぱり寝てるベポくんがいた。
テレビが付けっぱなしだ。
毎日見ていた番組、見逃しちゃったね。
今も晩ご飯だからと起こしてみたけど、なかなか目を覚まさなかったし、食べなからもうとうとしている。
そのまま寝たらシチューで溺れちゃうよ。
「ふあぁ」
「…ベポくん、眠たそうだね」
「…んん?なぁに…?」
寝ぼけまなこである。スプーンが裏返しでシチューをすくえてないよ。
「いっぱい寝てるけど、足りないのかなって」
「うん。…なんかね、寝ても寝ても眠いの」
「…ここに来たときも寝てたみたいだけど…同じくらい?」
「…うん、あの時も、ずっと眠かった。すっごく」
「………」
朝から考えていた。このおかしな睡眠について。
ベポくんはいつの間にか私の部屋にいた。深く深く眠りながら。
だからもしかしたら、戻る時も、来たときと同じように?
ただの勝手な推測だけど、絶対にないとは言いきれない。
それに、ベポくんがここに来たのは私がお風呂に入ってる最中だった。私が知らないうちに来たのだから、
「(私が知らないうちに、唐突にいなくなっちゃうかもしれないのか。)」
「×××、どうしたの?」
「…いや、シチューおかわりしようか迷ってた」
「…そっか……ふああ」
「…私さ、ベポくんと一緒で楽しいこといっぱいあったよ」
「うん………」
「……」
「おれも、」
「、……」
「×××と一緒だと、楽しいよ」
「…うん、ありがとう、ベポくん」
目の前のシロクマさんはもう限界だったようで、机に突っ伏して寝てしまった。シチューに顔突っ込まなくてよかった。片付けが大変になってしまう。
ベポくんにカメラを向ける。ぐうぐうと唸りながら、口は半開きでまぬけだ。ぱしゃり。
最後の一枚だったみたい。カメラの中からはフィルムを巻き取る音が聞こえた。
「(まだ、写真になってないんだけどな)」
ホットケーキの写真あげる約束なんだけど。
明日はカメラ屋さんに行こうと思う。場所がどこなのか調べなくちゃ。
これが写真になるまで、どのくらいの時間がかかるんだろう。
それまでにベポくんはここにいられる?
「あとどれだけ一緒に過ごせるのかな」
寝てしまったベポくんに布団をかけて、ぽつりと呟いた。
(まだ帰らないで、もう少しだけ待ってて)