大嫌いなアイツ
エンヴィーは去って行って、私一人重厚な扉の前で立ち尽くすことになった。別にその後すぐその扉が開いたからいいんだけど。
「テオ!何もされてないよな!?」
「その前になんでここに!?ていうかなんで成長してないの!?」
「とりあえず久しぶり。元気を通り越してはっちゃけてるみたいだね。噂はかねがね」
エドとは少し前に会ったけど、アルとは久しぶり。家族に再会出来てとっても嬉しい!わたしって、なんて家族を愛してるのかしら!
「君は確か鋼のの姉の…」
「弟がお世話になっています、マスタング…今は大佐さんでしたっけ?」
「テオさんは昔と何も変わってないようで…」
そりゃあね。普通のレディーならその挨拶で間違っていなかっただろうけど。わたしにとってはちょっぴり心に傷がつく。初めて会った時から4年。普通なら成長してる。普通なら、ね。
「!そうだよ!一体どうなって…」
「んー、ふふ。それはわたしじゃなくてパパが話すことだと思うの」
「…ホーエンハイム…ッ!」
エドはどれだけパパのことが嫌いなの?それとも反抗期を拗らせすぎちゃったとか?うーん…まあどっちでもいいや。パパは前途多難だね。娘まで嫌ってなかった分マシだ。
「エドとアルはまだ賢者の石を追ってるの?」
「賢者の石は…もう、追ってない…」
「そ」と短く返事をした。あれだけ必死に追いかけてたのにね。そんなに簡単に諦められるものだったからかな。どうしてなのかな?
「原料を知っちゃったりした…とか?」
「!!」
わかりやすい反応だね、三人とも。それとも生きてきた年数分、そういうのに鋭くなっちゃったのかな?まあそれを確かめられたならもういいや。早くパパのとこに帰ろう。
「テオ…お前、どこまで知ってる…!」
「お姉ちゃんに向かってお前はないんじゃない?」
二人より背が小っちゃくなっても、私がお姉ちゃんなんだから。もっと敬って欲しいものだわ。まったく。
「でもね」思った以上に子供らしくない声音を、表情をしちゃってたかも。くるり、と三人に背を向けて足を踏み出した。ここでまた二人とはお別れだけど、忠告みたいなものはしておこうかな、と思う。
「あんなもの使って罪を洗おうとしてたら、わたし、二人のこと殺してたかも」