星の瞬き | ナノ


  第一の試験


カブトとの邂逅後、試験官達が瞬身でやって来た。下忍達は瞬身の術を知らないのか、突然現れた試験官達に驚きざわめいている。


「待たせたな…中忍選抜第一の試験・試験官の森乃イビキだ」


オレはまだカブトの登場により、体を震わせていた。


あれに恐怖しないほうがおかしい。
嫌だ。帰りたい。面倒だし、疲れるし。


でも、そんな願いは聞き入れてもらえず、オレはサクラに腕を引かれ試験会場に向かう。

志願書を提出し、指定通りの席に着席する。隣を見ればヒナタだった。


「うわぁ!ヒナタじゃん、お互い頑張ろう」

「う、うん…頑張ろうね…!」


先ほどから緊張していた体もほぐれた。心につっかえていた恐怖もすぅっと引いていく。


全員が着席し、テスト用紙と鉛筆が配られる。試験官は窓側の椅子に座り、これでもかというくらい下忍達を監視する。


そろそろ始まるかな、と意気込んだところでイビキ試験官が試験の説明を始めた。チョークで黒板に試験ルールをつらつらと書いていく。

簡単に説明すると、こうだ。

各個人にはそれぞれ10点ずつの持ち点を与えられている。筆記問題一問回答ごとに1点。不正解であればマイナス1点。

試験はチーム戦であり、三人一組で満点30点で合否を判断する。

また、カンニング行為及びそれに準ずる行動をすれば、一回ごとにマイナス2点。試験終了時までに持ち点が0になった本人と、そのチームは不合格となる。


随分と厳しいルールのようだ。周囲を見れば、ルールを聞いて顔を顰める人も一人、二人ではない。相当なプレッシャーとなるだろうな。


「試験時間は一時間だ…始めろ!!」


イビキ試験官の合図により試験が開始する。紙を捲くる音が大量にし、鉛筆を動かす音も聞こえる。


さてと。オレも始めるかな、と紙を裏返す。で、問題を二度見。

…これ、絶対下忍には解けない問題だろう
あー…確かこの試験って筆記は関係ないんだっけ?


試験官にばれないように周りを探る。
大体はこの試験の意味に気付いていないようだ。真面目に取り組んでいる。そんなことしなくても意味はないのに


おそらくこの試験は情報収集能力を試す試験。

サスケは写輪眼で手を動かしている人の動きをコピーしているな。きっと隣のヒナタは白眼を使っていることであろう。ちらっと上を見たらきらりと輝く鏡が目に入った。おそらくこれも誰かが仕込んだもの

気付いた者はなかなかに頭がキレるようだ。
…サクラは自力で解いているようだけど。


さて、オレはどうするか。
解くか、解かざるべきか

残念ながらオレは、夢小説でありがちな情報収集のための術を持ってないなんてことはない。きちんと仕込まれている。

ただ。疲れるんだよな、コレが。


十問目の、時間が来れば出題されるこの問題。これさえ解ければ確か問題ないはず…


昼寝でもすっかな?よし、そうと決まれば決行だ。オレは疲れることはしない主義だ

机の上に腕を組み、頭を預けて夢の世界にこんにちは



*****



何十分か経過後、イビキ試験官の声が聞こえた。

ん?なんだ、なにやら騒々しい
「受けるか受けないか」なんて言葉が聞こえてくる

あちゃー、完璧寝過ごしたようだ。欠伸を一つ。


んー、どうやらこの受けないを選択すれば失格。で、受けるを選んで問題に正解できなければ、永久に中忍試験の受験資格を剥奪されるらしい。

でもそんなのオレには関係ないな。だって今年落ちたらもう用はないもん。というか忍者になるつもりはないし


たとえ強制的に特別部隊の隊長に組み込まれようとも、フラグ回避の野望が折れることはない!



と、ナルセが再び決意を固めているところ。こちらはサクラ。

サクラは悩んでいた。ここで自分が受けないを選択するべきかを。


試験問題の回答に自信がないわけじゃない

でも、もしこの十問目で私が不正解になってしまったらナルセとサスケ君を道連れにしてしまう


サクラの中で葛藤が芽生える中、一人の男が手を挙げ、受けないことを選択し不合格となった。その男に触発され、次々に手が挙がっていく。


そうだ。ここで自分が足を引っ張るべきではない。次の機会を待つほうが断然良いに決まっている。

自分の師匠を見つめながらサクラは手を挙げようとした。しかし、それは未然に終わる。


その師匠、ナルセが挙手をしたからだ。







「(!?あの馬鹿!何考えてやがる!!)」

「(えっ…ナルセ!?)」

「(そんな、ナルセくんどうして…)」


ナルセは小さく手を挙げていた。それを見た同チーム、そしてヒナタは驚愕する。

なぜ、お前が手を挙げたのかと。

しかし、ナルセは手を挙げたまま口を開かない。不審に思ったイビキ試験官が声をかける。


「どうした?お前も辞退するのか?」


だが、試験官の呼びかけにも応じない。これは一体どういうことか。何かあったのか

そう危惧した中、ぴくりとナルセが動いた。


「…ぶぇっくしょい!


…大きなくしゃみをした。当の本人は鼻が痒いらしく、ずるずると鼻を啜っている。


「あ、すみません。どうにもくしゃみが我慢できなくて」


へへへ、とナルセは緊迫した空気の中、どうってことなさそうに詫びる。


「なんだ、お前は辞退しないのか?」


イビキ試験官が意地悪そうにナルセを挑発する。
ナルセはぽかんとして試験官の顔を見つめ、ニタァと笑った。


「僕ですかー?僕はぁ、正直同じチームの二人を道連れにしないために残っているだけですよぉ。ぶっちゃけ、僕ってば試験とかどうでもいいんで。というか忍にはなりたくないというか…

つまり二人の邪魔をしたくないだけなんだってば」


イラつく口調でへらへらと笑い、そう言い終わる。同じチームの二人は思った。そうだった、こいつはこういうやつだ、と。

イビキ試験官は少なからず驚いたようで繰り返し訊ねる。


「もう一度だけ訊く…人生を賭けた選択だ、止めるなら今だぞ」

「いや、ですから。僕自身のことはどうでもいいんで。試験資格の剥奪なんて、僕別にどうってことないんでー」


同じ試験会場にいた受験者も驚いた。ならばなぜお前はここにいるのか、と。

まあ迷わずにこう即答するであろう。

「人数合わせです」


「………フン、良い度胸だ。ではここに残った全員に第一の試験、合格を申し渡す!!」


合格

その二文字に受験者は唖然とする。
今までの緊張感はどこに行ったのやら


「ちょ…ちょっと…どういうことですか?いきなり合格なんて、十問目の問題は?!」


サクラが消えた十問目について問いただす。


「そんなものは始めから無いよ。言ってみればさっきの二択が十問目だな」


おい、ドSキャラはどこにいった。
今のお前はそこらにいる優しいただのおっさんだぞ。これが俗にいうキャラ崩壊というものかー!?

と、ナルセは一人場違いなことを考えていた。


「じゃあ今までの前九問は何だったんだ…?まるで無駄じゃない!」

「無駄じゃないぞ。九問目までの問題はもうすでにその目的を遂げていたんだからな。君達個人個人の情報収集能力を試すという目的をな」


イビキ試験官はテマリの抗議に簡潔に言い返す。
さらには、この試験は三人一組で合否を判定するというプレッシャー付きのものだと付け加えもして。


そこからイビキ試験官はバンダナを外し、情報の重要性を語った。


情報とは時において命よりも重い価値を持ち、任務や戦場であれば命懸けで奪われるものだと。イビキ試験官の頭の拷問の痕がそれを物語っていた。

また、忍であれば降りることも出来ない任務もある。そんな苦境を乗り越え、突破していく能力。それが十問目に込められた意味であった



「入口は突破した…中忍選抜第一の試験は終了だ。君達の健闘を祈る!」




第一の試験、突破
(無事合格したようです)
(鼻かいー…)


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