家出騒動
事件とは、ある日唐突に起きるものだ。あまりの衝撃に手に持っていたグラスを足元に落としてしまった。ガラスの破片が床に飛び散る。足を切る、などはその時考えられなかった。
「……家出する」
は?とその場にいたやつらの声が重なった。こんなところ、もう耐えられない。デリカシーがなさすぎる。
我を取り戻す前に宣言通り荷物を手早く纏め、アジトを飛び出した。あいつらがわたわたと慌てだしたのはオレが出て行って数分後のこと。元凶である飛段はその場にいる全員から非難の目を浴びていた。
「…連帯責任よ。あなた達二人が責任もって迎えに行きなさい」
「……ハイ」
その時の小南には逆らえる気配がしなかったとか。
*****
「それで?暁のアジトを飛び出してここに来たわけね」
確かにここならあいつらも容易に近付いては来ないだろうけれど…と大蛇丸は半分呆れながら口にした。
だってだって、あんなデリカシーのないやつらと同じ空間で同じ空気を吸ってるだなんて考えたくない。再不斬達も置いて来ちゃったが、あいつらならきっと大丈夫だ。
というわけで(一応)頼りにしてる大蛇丸のところに飛び込んだってわけだ。嫌々そうにしていても最終的に受け入れてくれるのはわかってんだからこのこのォ!
はぁーあ、と香燐が大きく溜め息を吐いた。
「ったく…こっちの迷惑も少しは考えたらどうだ?」
「…ごめん」
「べ、別に謝れって言ったわけじゃ…!」
香燐、なんでこんな可愛いんだろ。わざといじっているのがわかったのか、水月がジト目でこちらを見てきた。羨ましいのか、そうなのか。
香燐に止めろ、と制止をかけたのは水月ではなくカブトだった。
「迷惑を被るのは僕らなんだ。謝罪くらい貰って当然さ」
「でもオレは何も悪くないもん。あいつらが悪いんだもん」
「気持ち悪いよ」
「傷ついた。慰謝料を請求する」
「傷つくような心なんてあったんだ」
「死ね」
カブトってほんといい根性してると思う。
どいつもこいつも
(叩きのめしてやろうかこの眼鏡)
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