星の瞬き | ナノ


  赤き天才傀儡師@


「待ちなさい!」


呼び止める声にサソリと狐面は立ち止まり、振り返った。

意識のない者を運んでいるせいか、二人にそれ程のスピードはなかった。そのためサクラとチヨが作戦を決めつつ先を急いでも追いつくことができたのだ。

サソリはサクラ、チヨの二人を見て重たい溜息を吐いた。


「とっくの昔に引退したと聞いていたんだがな」

「急に孫の顔が見たくなってな」


サソリと対峙したサクラは身震いした。これだけでわかる自分との実践経験の大きな差と、……どれだけ人を殺してきたか、を。あまりの恐怖にサクラは唾を呑み込んだ。


「サクラ、恐れるな。このワシがおる。お前は後ろへ下がっておれ」


チヨバアはサクラの代わりに前へ出る。袖に腕を通し、チャクラ糸で繋げたクナイをサソリへ向けた。クナイはサソリに向かい飛翔する。サソリからすれば軌道の読めるそれは、鉄の尾により弾かれた。だが逃したクナイの何本かがコートを破く。


「オレに盾突こうってんなら仕方ねェ…」


サソリの尾はそのまま己のコートを破り捨てた。その時サクラが異様な光景に目を見開く。恐怖のあまり生理的な汗が流れた。


「そこのガキと一緒にオレのコレクションになるか?チヨバアよ」


サソリの背には巨大な鬼のような顔があった。

「あれが人傀儡…」サクラがその物体を指して呟いた。何が、どこから、どうやってくるのか。その全てに細心の注意を払わなくてはならない。


「あはっ。そのおっかない顔が芸術って!」


スパン。ヒルコの尾が狐の面の人物の脳天を叩いた。「痛い!」と狐面が叫び声を上げる。サソリの気に障ったようだ。……あの人のせいで緊張感がないように思えるのは間違いではない。


「よいな、サクラ。先手は打てた。作戦通りに、じゃ」

「はい。いつでもいけます!」

「ハッ!小娘とババアに何ができる」

「安心しろ。その小娘とババアにお前はこれからやられるんじゃからの」


意気込んだサクラはクナイを手に、チヨバアと駆け出す。ヒルコは口元の布をはぎ取った。その口から多くの千本が飛び出す。二人は軽やかに避けながら、確実にヒルコに近付いていった。

ヒルコが千本を攻撃を止めた時、二人も動きを止めた。一層警戒を強める。続けてヒルコは口ではなく左腕の仕込みによる千本をぶつけた。左腕はロケットパンチのように発射され、備えられていた筒から大量の千本が飛び出す。だがその攻撃も二人は避けた。


「(チヨバアはともかく小娘まで…なぜ?)」


走り出したサクラを目に留め、チヨバアに視線を向けた。チヨバアに動きは無し。援護もなしに正面から突っ込んで来られるとはなめられたものだとサソリは思った。

サクラの投げクナイを尾で弾き、そのまま尾をサクラに向ける。しかしその尾はサクラの鼻先で動きを止めた。


「(なっ!?動かねェ!そうかァ…ババア!)」


そこでやっとサソリはチヨバアの先手を理解した。


「今じゃサクラ!叩き込め!!」

「ハイ!!」


チャクラを纏ったサクラの重い拳が振るわれた。




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