勾引かす
「んふふ…たっだいまー!」
腕に大量のまんじゅうを抱えて帰還を告げる。もう幸せいっぱい夢いっぱい!
もうコレおいしい!思わず大量に買い込んじゃった。代金は、まあ……うちのお財布係りをおど…ゲフン!お願いするしかないかな!
「おせェ」
「あぶなっ!」
先に砂の里を出ていた二人に追いつくと同時に毒針が飛んでくる。
危ない、危なすぎる!遅れたのは謝るよ。でもね、こんな強い毒を仕込んだ針を向けなくてもいいと思うの!
「オレをいつまでも待たせやがって…」
「ごめんって。ほら…まんじゅうあげるから、さ…?」
え?甘いものは嫌いだって?そりゃ残念だ。
待つのも待たせるのも嫌い。こいつを相手にするのはすこーし面倒だ。オレに対しては甘いとデイダラから聞いたが、遅れて毒針で甘いって…デイダラはどんなのを経験したんだろうな。
もそもそとまんじゅうを食べながら二人のことを見回す。デイダラの片腕はなくなっていた。我愛羅の体は砂の鎧が剥げ、傷でいっぱいだった。
「…二人ともボロボロ」
思った以上にオレの声は冷たく響いた。喧嘩をして帰った子供…なんて可愛いもんさ。我愛羅なんてもう瀕死状態だし。残りHPは1だろうさ。
「ばっきゃろー怪我なんてしやがって!」
「仕方ェだろ!こいつ、結構強かったんだ…うん」
自信満々で突っ込んでいったのはどこのどいつなんだよ……。ま、作戦は成功したからこれ以上は責めないでいてやろう。
さーてあとはアジトに向かうのみ。朝日が眩しいねぇ。持って来た狐の面で影を作り、もそもそとまんじゅうを頬張る。美味し。
不意にサソリが立ち止まった。それを見たオレとデイダラも立ち止まる。「どうした?旦那」デイダラがサソリに問うと同じく、背後を振り返った。
「まさか、ついてくるやつがいるとはな」
「待て!」
ほほう。聞き覚えのある声。サソリのトラップを潜り抜けてくるなんて中々。
我愛羅を返せ、なんて兄弟なら当然の言葉を言う。昔とは大違いじゃん?なあ?カンクロウ。
「お前らは先に行ってろ」
ここはサソリが相手をするみたい。機嫌も悪いし、ここは素直に任せるべきか。
「(向こうのがおかしな鳥を使うやつ、ってことはこっちはトラップを仕掛けたやつか。あの狐の面のやつは?知らないやつじゃん)」
カンクロウが背中の巻物を広げる。印を結んで三体の傀儡が現れた。傀儡特有の音が響く。
サソリ相手に傀儡、ねぇ。デイダラと目を合わせて苦笑した。デイダラの粘土の鳥に飛び乗る。
「じゃ、オイラ達は先に行くぜ。うん」
「行かせるか!」
傀儡が一体、こちらに向かう。意外に早い。避けられるか、と思ったがそこはサソリが尾で人形を捕えてくれた。流石の傀儡捌き。
「オレは人を待つのも待たせるのも好きじゃねぇからな。すぐに終わらせる」
*****
カカシと鈴取り次の日の早朝、第七班改め新カカシ班は初任務を受けるため、火影の元へ向かった。
綱手と軽い会話を繰り広げる中、一人の暗号班の女性が慌てて火影室に入って来た。女性が言うには、砂隠れの風影、我愛羅が“暁”という組織に連れ去られたというもの。
「“暁”…イタチの……」
暁に関しては木ノ葉の方が多くの情報を有する。そのため砂が木ノ葉に応援を求めてきた。
「これよりカカシ班に改めて任務を言い渡す。直ちに砂隠れの里へ行き、状況を把握し木ノ葉へ伝達。その後砂隠れの命に従い、彼らを支援しろ!」
ミッション、風影を救え
(数年ぶりの新任務)
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