星の瞬き | ナノ


  変わりたい自分


先日(認めなくはありませんが)迷子になったことで、外出する時は誰かがお供をするようになった。なんだか子供扱いされているようで腑に落ちませんが


「何この子!ヒナタってばほんとに可愛い!!」


キャラに会えるなら話は別デス!ヒナタの苦笑にすら愛しさを感じる!!素晴らしいデス、この世界は!!!

何でこんなに可愛いんでしょう!?二次元クオリティ?いえいえそんなことあるはずがありません!もうこの笑顔に殺傷能力がありすぎるというか、半端ないというか!


「カカシ先生がナルセに似ていると言ったのは本当のようだ。なぜならナルセもよくヒナタに絡んでいたからだ」

「ナルセさんに…?」


カカシ先生ってば一体どんな紹介の仕方をしたんだろ?というかシノ、いたんデスね。


「ナルセさんとあたしが似てるって…。きっと相当な変態だったんデスね」


自分で言うのも何デスが。よく似てるって言われるのは危ない行為をしてた時ばっかりでしたし。

するとヒナタが「違うよ!」と声を上げた。


「ほ、本当に優しい人でね…。いつも私に、勇気を与えてくれたの」


モジモジとしながらも、ヒナタはしっかりとナルセの人柄を語った。

そこでピンと来た。これはあたしがいなかった頃の話を本人から聞くチャンスデス。


「へぇ…なら中忍試験の時のこと、聞かせてくださいよ。いのからも聞いたので」

「中忍試験のこと?…う、うん。いいよ…」


*****


ヒナタは中忍試験の予選時を思い返した。予選はネジ兄さんと当たった。

ネジ兄さんのことは好きだったけど、怖いと思ったこともあった。宗家に対する異常なほどの執着心。ネジ兄さんは怨霊に憑かれたのかと思うくらい宗家を、私のことを恨んでいた。


それでも、私はネジ兄さんのことが好きだった。


何か変わりたくて、ネジ兄さんに一歩でも近付きたくて試験を受けた。それなのに、ネジ兄さんは人は変わることはないと真っ向から否定した。

ショックだった。私の気持ちを理解して欲しかった。


「自分を変えるなんてこと絶対にでき「できる!!


ネジ兄さんの言葉に絶望すら感じていた時、声を張り上げてネジ兄さんの言葉を遮った人がいた。私の黒髪とは正反対の、光で輝く金髪に綺麗な青い瞳を持った人。ナルセくんだったの。

ナルセくんにはいつも相談に乗ってもらっていて、とても感謝していたし、誰にも流されないところに魅力すら感じていた。


「運命だと?この厨二病め!ヒナタの気持ちを知りもしないで!!」

「ナルセくん…!」


ただ、ちょっといつネジ兄さんに気持ちがばれるのか冷や冷やすることが何度かあったけど。


「お前なァ!ちょっとモテるからってあんまり調子乗ってんじゃねェよ!!オレがヒナタを嫁に貰うぞ!?ああ゛!?」

「ちょ、ちょっとナルセ…何言ってるの!」


ナルセくんの隣にいたカカシ先生は必死にナルセ君を宥めていた。どこからどうなったら嫁とかそういう話になるの、って。

でも、嬉しかった。

恐怖と迷いはいつの間にか消え去っていた。いつだって私の何かを変えて来てくれたナルセくん。いつだって救ってくれた。


「(――ありがとう)」


おかげでネジ兄さんに立ち向かっていく勇気ができた。好きな人に間違ったことを正して欲しいと思うことは当然だもの。


傷がいくら増えようとも立ち上がった。何度血を吐いても立ち上がった。どれだけ痛くても立ち上がった。

ネジ兄さんを変えるため。自分を変えるため。


でもダメだったかな。私のこの言葉がネジ兄さんを傷つけたの。


「本当に…苦しんでるのはあなたの方……。迷っているのは、ネジ兄さん、なのよ…。逃げては…ダメ……」


ネジ兄さんの目に殺気が宿った。

ああ、殺されちゃうかな。でも好きな人に殺されるなら、その方がいいかも。どうせ私は出来損ないだから…


ふっと頭の隅に金色が浮かんだ。

ダメ、まだ死んではダメ。何も変わってない、何も変えてない。


でも後悔してももう遅い。ネジ兄さんはこっちに向かって来ている。変わりたい、変わりたいの。


ネジ兄さんが攻撃をしかけようとした。でも届かなかった。ガイ先生、紅先生、カカシ先生、ハヤテ審判がネジ兄さんを取り押さえていたから。

驚き半分、救われたと思った時体がぐらりと傾いた。あ、倒れる。そう思ったけど衝撃はなかった。誰かに抱かれているような感覚に包まれた。


「お疲れ、ヒナタ」


最後まで私を後押ししてくれた人がそこにいた。柔らかく私に微笑んでくれていて、それと同じくらい柔らかい光で私の体を包んでくれていた。体の痛みが段々と引いて行った。


「ナルセ…いいの?」

「大事な、大事なヒナタのためだからいいの」


いいって、何がいいの?ナルセくんが本当は強いことを教えちゃうこと?ナルセくんが下忍には到底できないことをしていること?


でもそんなことはどうでもよかった。

ナルセくんは微笑んでいた。いつもの声を上げて笑う笑い方じゃなくて。私達よりもずっと年上の人がするような、綺麗な笑い方。いつもの笑い方じゃないくて、“本当の”笑い方。時々しか見せてくれない、優しい笑み。


「やっと…本当に、笑えるように…なったんだね……」

「…しゃべらない方がいいってば」


ほら、どうして隠すの?どうして本当の自分を影に追いやるの?

いつか変わりたい。変えたい。自分を、ネジ兄さんを、ナルセくんを。


それでも一つだけ聞きたいの


「私…少しは……変われたかなぁ…?」

「もちろんさ」


嬉しいな、ありがとう

ナルセくんの微笑みを最後に私は目を閉じた。




後からキバ君から聞いた話なんだけどね。その後もナルセくんは何かしたみたいなの。


「おい、そこの金髪」


ネジに呼ばれたナルセは彼を振り返った。ヒナタの体をそっとサクラに任せて。


「お前に二つほど注意しておく。忍ならば見苦しい他人の応援などやめろ。そしてもう一つ……所詮落ちこぼれは落ちこぼれだ。変われなどしない!」


ネジがそう言った後、ナルセはゆっくりと立ち上がった。ピリッと肌に何か感じた。違和感を感じたもののネジはナルセを睨みつけることを止めない。

一瞬、ナルセの体が消えた。


ナルセ!落ち着くんじゃ!!


火影の声にネジははっとした。

目の寸前にクナイの先端がある。ほんの少し動かすだけで目を潰してしまうほどの距離。火影が声を上げるまで気付かなかった。


「ナルセ止めて!」

「ここまで隠してきた意味がなくなるだろう」


同じ第七班の二人がナルセを止めた。だが二人とも若干顔を青ざめさせている。見ていた人達も恐怖した。


「……口のきき方には気を付けろ」


あれはダレだ、と。


ナルセはクナイをくるくると回してポーチに仕舞い込んだ。

やっとのことで息を吐きだした人々。あれはきっと見間違いだと、自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。

だって本人は今、担架で運ばれているヒナタを見て「死ぬなってばー!オレの癒しなんだからなー!」といつもの調子で騒いでいる。

あってはならない、あってはならないことなのだから。


新しい獲物を見つけた我愛羅はニヤリと笑った。体が疼いていた。隣で見ていたカンクロウはぞくりとする。化け物が、怪物がここにもいたと。


ナルセもまた嗤った。我愛羅にしかわからないように。馬鹿のように騒いでいた先程とは全く違う、強者の笑み。

我愛羅の傍にいたカンクロウにもその笑みは見えてしまって。彼は恐怖で体を震わせた。


「だ、だからその…ナルセくんはとてもいい人なの!」


ヒナタは勇気を振り絞ってあたしにそう言った。

ほんとに。いろんな人から話を聞く度にいつも思う。


「そんないい人がなんで里抜けを…?」


顎に手を当てて思案した。理由が思いつかない。ヒナタとキバは顔を険しくしていた。それに気付いてふと顔を上げた。

「何か知ってるんデスか?」と尋ねると、言い難いのかヒナタは「ええと…」と言葉を濁らせた。


「この世界を、壊すんだとさ」


キバが代わりに忌々しそうに言った。何かを、ナルセさんを憎んでいるようで、言葉には棘があった。


「キ、キバ君!それは違うってサスケくんやサクラちゃんも言ってたじゃない!」

「だったらなんであいつは平気でオレ達を傷つけたんだよッ!」


違った。憎んでるのはナルセさんじゃなかった。


「皆ナルセは裏切ってないって言うが…。あいつは裏切ったんだよ」

「……ほんとは止められなかったことが悔しいんデスね。許せないのは自分自身なんデスね」


気付けば口から出ていた言葉。リアナはじっとキバの目を見つめて言った。キバの胸が大きく跳ねあがった。


「自分を責め続けてたら、何も変わりませんよ」


リアナの目は真っ直ぐで、穢れを知らず純粋だった。


キバの胸の内でつっかえ棒のような何かがすとんと落ちた。そうか、許せなかったのは自分自身だったのか。あいつを引き留められなかった、自分なのか。だから、こんなにも苛ついているのか。


どこか清々しい気持ちでキバは前を向いた。

リアナはヒナタを甘味処に誘っていた。



変えたいアナタ
(ヒナター、デートしましょ!)
(え、いいけど…)
(デートってのにツッコまないのか!?)
(デートと言うには語弊がある。遊びに行くと言うのが正し(そんなことより止めろよ!)


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